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第36話

「違うだろ。恋人だろ」 「だって、皐月さん彼女いるんでしょ?ならオレ、愛人じゃん」 「いないよ、見栄張っただけだよ、居るように見えるか?」 「……見えない」 それはそれでちょっと複雑だ。 いないのは事実だけど。 「じゃあ、そういう事だからこれからよろしく」 「よろしくって、皐月さん、本気?」 「なに?お前は本気じゃないの?愛人の方がいいの?」 言葉に詰まったのか、千鶴は俯いて黙ってしまった。また泣いてるのかと思って、顎を掴んでグイと顔を上げると白い肌が真っ赤になっていた。 不覚にもその反応と、涙で潤んだ目に心臓を鷲掴みにされた。 「オレを、抱ける?」 「……傷が治ったらな」 きっとまだ半信半疑な千鶴に信じて貰うために、俺はそっと千鶴に触れるか触れないかギリギリのキスをした。

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