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第37話
千鶴の傷が治るまでの間、随分と穏やかな毎日を過ごした。
猫と千鶴と俺と。特別な物は何も無くて、食べて寝て何となくその日思いついた事をやって。
夜中になるとパソコンに向かって仕事を始める俺に形のいびつなおにぎりを作ってくれる千鶴が可愛いと思ったり、日中眠くてうたた寝してると毛布を掛けてくれていたり。
付き合うと言っても、キスだってしてないのに千鶴はそれでも文句も言わずに傍にいる。
それが普通な気がして、そうやって少しずつこの家に千鶴の居場所が出来始めた。
だから、忘れていた。
こんな穏やかな日常はそんなに長くは続かないんだって事を。
もう傷薬も湿布もいらなくなって、千鶴の肌が綺麗になった頃を見計らったように千鶴の携帯が鳴った。
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