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第69話

部屋着から外出用の服に着替えて携帯と鍵と財布、タバコにライターを持つと玄関先で待つ河内の元に戻った。 靴を履いて玄関の扉を閉め、河内が乗ってきた車の助手席に乗り込む。 河内も運転席に座りエンジンをかけた。 「千鶴んとこ向かって」 「はい……あの、乗り込むんですか」 車を発進させると河内が恐る恐る聞いてきた。能面みたいだと思っていた顔が少し脅えていた。 「千鶴を引き取りに行くだけだから、河内は車の中にいてくれ」 「え、でも……」 「そのヤバイ客って、ソッチの世界の奴だろ?お前が顔色変えるくらいの奴なら心当たりあるから心配しなくていい」 タバコに火をつけて深く吸い込んだ。 二度と関わるつもりのなかった過去の世界に千鶴を迎えに行く。 きっとそれが俺と千鶴が出会った意味なんだと思った。

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