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第145話
千鶴が帰らなくなって二日目の夜中、開けっ放しの玄関が開く音が聞こえた気がした。
俺は相変わらず、千鶴の布団の中でうとうとして寝てるのか覚めてるのかわからない状態だった。
多分これは夢だろうと目を閉じて、せめて夢なら千鶴に会えるかもと思った。
このまま永遠に眠ってしまえたら良いのになんて、センチメンタルな事まで思いつく。
そんな弱気な俺の上から、バサバサと何かが降ってくる音がして薄く目を開けた。
見上げた先には暗くてボヤけているけど誰かがいて、その誰かが降らせたそれは大量の紙幣だった。
布団の上だけではおさまらずに、千鶴の部屋一面に散らばった一万円札。まるで紙切れの様にヒラヒラと舞っている中に居たのは、求めてやまない千鶴だった。
「ただいま、皐月さん」
その声に、俺は上半身を起こして必死で千鶴にしがみついた。
千鶴の温もりと匂いを感じて、情けないくらいに涙が流れた。
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