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第191話

「俺が皐月さんを幸せにするし、皐月さんは俺を幸せにしてくれるから、だからもう願う必要ないもん」 「……そうか」 「うんうん」 ああ、参ったな。 俺は千鶴と居れたらそれだけで幸せだけど、どうやら千鶴もそうみたいだ。 そしてそれを当たり前に思ってくれている。 なんて幸せな事なんだろう。 そんなものに縁はないと思って生きていた頃が嘘みたいに思える。 ずっと夜から抜け出せないと感じていた日々が今はもう遠い。 あの頃、滲む月の光の下でしか息が出来なかった俺はもういない。 月虹を見上げながら独りで過ごす日々はもう終わった。 「皐月さん、手繋いでいい?」 差し出された手に躊躇いもせずに自分の手を重ねた。 子供みたいに澄んだ笑顔で笑って、ぎゅっと握り返してくる千鶴。 もう夜の闇にひっそりと咲く華のような孤独な生き方はおしまいにしよう。 そしてこれからは千鶴と三匹の猫達と一緒にあの古い家でいつまでも、いつまでも。 共に生きていこう。 消せない罪と、真っ白な未来を抱えながら。 《終》

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