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第190話

けれど真幸に対して嘘も誤魔化しも遠慮もいらない。 真幸はきっと、分かってて聞いてるんだ。 「付き合ってるよ」 「……そうか」 「ああ」 隣でフッと笑顔を見せた真幸。 長年の親友にこんな話をするのは初めてだったから、俺は少し照れてしまった。 「幸せ、なんだな」 真幸の言葉はいつも少し足りない。 そのせいで周りに誤解されたりもするけれど、俺はそんな真幸から出る言葉が好きだ。 「幸せ、だな」 それでも俺はこの先もずっと、真幸の幸せを一番に願い続けるだろう。 そして真幸が困ったら真っ先に駆け付けて力を貸す。 散々遊び倒した施設からの帰り道、千鶴にそんな話をした。 一番に幸せを願う相手が付き合っている千鶴じゃない事に、千鶴はどう思うのか気になって。 「いいんじゃない?」 当たり前だとでも言うように、そんな返事が返ってきた。

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