190 / 191
第190話
けれど真幸に対して嘘も誤魔化しも遠慮もいらない。
真幸はきっと、分かってて聞いてるんだ。
「付き合ってるよ」
「……そうか」
「ああ」
隣でフッと笑顔を見せた真幸。
長年の親友にこんな話をするのは初めてだったから、俺は少し照れてしまった。
「幸せ、なんだな」
真幸の言葉はいつも少し足りない。
そのせいで周りに誤解されたりもするけれど、俺はそんな真幸から出る言葉が好きだ。
「幸せ、だな」
それでも俺はこの先もずっと、真幸の幸せを一番に願い続けるだろう。
そして真幸が困ったら真っ先に駆け付けて力を貸す。
散々遊び倒した施設からの帰り道、千鶴にそんな話をした。
一番に幸せを願う相手が付き合っている千鶴じゃない事に、千鶴はどう思うのか気になって。
「いいんじゃない?」
当たり前だとでも言うように、そんな返事が返ってきた。
ともだちにシェアしよう!