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閑話:午前11時の逢引 (11)

安っぽいベッドが、ギシギシ軋む。 「あっ、あっ、あっ!」 「さっきまでの威勢はどうしたんですか?」 「う、るさい……っ」 キスも愛撫もいらないからと、部屋に入るなり自分からスーツを脱ぎ捨て佐藤くん自身を強請った。 でも『俺を大事にする』と強固な決意を抱いているらしい佐藤くんは、なかなか俺の望み通りのものをくれない。 それは俺を焦らしに焦らしまくる結果になり、太い指で中をやんわりと撫でられては白濁を散らし、舌先で熱の中心を吸われては全身を震わせる。 そんな俺を見下ろしながら、佐藤くんはなんだかとても幸せそうだった。 股間のそれは、しっかりと天井を向いていたけれど。 「理人さん、ほんとに知らなかったんですか?」 ゆっくりと俺の中に沈めたものを抜き差ししながら、佐藤くんが眉を寄せて訝しむ。 「なっ……なにが……あ、あっ!」 「ブライダルフェア」 「し、知るかよ、そんなのっ……知ってたら、行ってな……ん、うんんっ」 膝の裏から足を持ち上げられ、奥をぐりぐり抉られる。 激しすぎる刺激から逃げようとして、でもすぐに腰を引き寄せられた。 出ていこうとした佐藤くんの先端がちょうどイイところを掠め、ビクンと強張った腹筋の上に淫らな雫が垂れた。 数十分前には皺ひとつなかったシーツが、もうクチャクチャのドッロドロのグッチャグチャだ。 掃除の人、ごめん。 「そこ、擦るのやめ……あ、あ、やめろよぉ……っ」 「理人さんがかわいいから」 「いちいち俺のせいにっ……あ、ふっ」 腹が立つくらいその一点ばかりを揶揄っていた熱が、一気に奥まで挿入ってきた。 また背中がぞわぞわする。 男は一回しかイケない。 中学の時に保健体育でそう習った覚えがあるけど、それは真っ赤な嘘だ。 「んっ……ん、ん!」 「あ、理人さ……っ」 自分では制御できない波が押し寄せてきて、俺はまた雫を飛ばしていた。 強張る身体が、佐藤くんの強い腕に包み込まれる。 佐藤くんもまた、広い背中を小刻みに震わせていた。 俺は、この瞬間が好きだ。 佐藤くんが欲望を解き放ち、俺に身体を預けてくるとき。 ずっしりと心臓を押しつぶしてくるその重みが、 耳のすぐ近くを掠める荒い息遣いが、 愛おしい。

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