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裏閑話:午後0時の事件簿 (2)

……コホン。 大変失礼いたしました。 わたしとしたことが、またみっともないところを見られてしまいましたね。 でも、しょうがないのです。 だって、 だって、 だってだってだって、 キスマークが丸見えなんですから! ええ、はい。 さっきも言いましたよ。 それがなにか? 大事なことは二回言うのが鉄則でしょう。 今日の神崎さんは、いつもはぴっちり閉めている襟口のボタンを閉じていません。 ポロシャツというラフな格好だということを考えれば、そこは問題ではありません。 大事なのは……、 キスマークが丸見えだということ! ごめんなさい。 三度目はさすがにしつこかったですね。 でも、心の叫びを聞いていただけたおかげでスッキリしました。 これで〝丸見えキスマークの傾向と対策〟に集中できます。 今、わたしが抱えている最も大きな課題。 それは、 どうやって伝えるか。 比較的お客さまの波が落ち着いたとは言え、まだレジを完全に離れるわけにはいきません。 距離的に話しかけられなくはないですが、さすがに囁き声では届かないでしょう。 まさかこんなこと大声で叫ぶわけにはいかないし……あ。 そうこうしてたら、佐藤くんと目が合いました。 チャーンスッ! ここぞとばかりに、自分の制服の襟を引っ張ったり、首筋を指でツンツンしてアピールします。 佐藤くんは不思議そうに首を傾げながら、自分の襟元を確認しています。 そうですよね。 そうなりますよね。 気持ちは分かる。 だがそうじゃない! わたしはにこにこしたままの佐藤くんに向かって、ありとあらゆるジェスチャーを繰り出して見せました。 ――違う! 大きく首を振ってみたり、 ――佐藤くんじゃなくて! 腕をクロスしてバツを作ってみたり、 ――神崎さんの方! 佐藤くんの前に佇む神崎さんを指差してみたり……って、あ、こっち見ちゃった!

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