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1-冬森が運命の相手を見つけたゾ

「十月に入ったので席替えをしよう」 中間テストに体育祭に文化祭、行事の詰まった十月初日。 私立男子校二年生のDクラスでは席替えが行われた。 こっそり情報入手していた冬森(ふゆもり)はガムをかみかみ、不真面目生徒ならば誰もが憧れる窓際一番後ろの席を不正くじ引きでゲットした。 よっしゃー、これで全授業ほぼ爆睡、決定。 朝のHR、窓全開で爽やかな秋風が騒々しい教室を訪れる中、暴走運転気味に移動を終えた冬森は早速机にうつ伏せて寝る準備に。 ラフにセットされた短髪はさもおばかそうなカラーに染められている。 ネクタイはいつだってゆるゆる。 平均体型をやや上回る体つき。 どえらく生意気そうなふてぶてしい目。 天然モノの褐色肌。 長袖シャツを肘まで捲り、筋張った腕をひんやり机にくっつけ、次はその腕に片頬をぺたりとくっつけて目を閉じた。 がたがたッ 隣に誰かやってきた。 うるせーと思い、薄目を開けた冬森は鬱陶しそうに隣を睨む。 長身、黒髪、黒縁眼鏡。 見るからに文系。 だらしなく机にうつ伏せて自分をじろりと見ている冬森を、相手も、ちらりと見下ろしてきた。 冬森のクラスメート、文系男子である彼の名前は。 「天音(あまね)、悪い、古典の教科書貸してくれる?」 休み時間、隣クラスの同級生に教科書を貸す隣席クラスメートを、机にうつ伏せたまま半眼でぼんやり冬森が眺めていたら。 「……顔に何かついてるか?」 高校生にしては大人びた低めの声。 物腰も落ち着いていて、周りがげらげらぎゃーぎゃー騒いでいるのに対し、静かに文庫本を読んでいた。 「眼鏡がついてマス」 「……ついてるんじゃない、かけてるんだ」

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