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冬森はえろあほ属性男子だった。
早々に童貞卒業した彼はいろんな女の子と軽薄なお付き合いを重ねて「ヤリチン」と呼ばれても過言でない、実にけしからん日々を送っていた。
「えーと、天音? お前って転校生?」
「転校生じゃない、ここには高等部から通ってる」
「あー道理で。エスカレーター組じゃねーよな」
秋村 と同じ眼鏡だけど、あいつのはなんかスタイリッシュっつーか、本体がイケメンだし目立つけど。
こいつほんと地味だな。
担任のへぼ村雨 よりも地味すぎ。
前髪、なが。
だから視力悪くすんだよ、頭よさげに見えて意外とバカなんじゃねーの。
「ふわぁ~、はー、だりぃ」
大あくびした冬森に肩を竦め、天音は文庫本に視線を戻した。
関節の目立つ長い指がゆっくりページを捲る。
「それエロい話?」
「……違う」
次の授業は現代社会、寝ていると平均点を容赦なく減らす教師であり、冬森は渋々起きていたのだが。
あ、やべ、教科書どっかいった。
「天音、俺にも教科書貸して」
「俺も読むから教科書は貸せない」
「天音のクソケチ」
「あのな……見せてやるからこっちに来い」
冬森は机をギィギィ言わせて隣机に寄った、しかし真面目に授業を受けるつもりは毛頭ない、スマホのメールアプリでセフレ関係にある人物に夜の予定を早速問い合わせた。
……ん、うわ。
こいつちゃんと真面目にノートとってやがる。
しかもボードに書かれてない、口で説明しただけのも書いてやがる。
よくできたクソ真面目クンですねー。
あ、消しゴムで消してる、間違えてやがんの、ださ。
俺なんか横線でぐちゃぐちゃ消して、いちいち消しゴムなんか使わねー、だって時間もったいねー、やっぱどっかバカだねー、こいつ。
「あのな、俺の手元を覗き込むんじゃなくて教科書を見ろ」
「クソ眠ぃ」
「自分の睡眠事情を俺に言われても困る」
昼休み、面接室。
「冬森君、アンケート集計を終えてくれたのはいいけれど」
えろあほ属性なる褐色男子生徒かつ文化祭企画委員に、生徒と教師らしからぬ距離感で、そっと囁きかける担任教師の村雨先生。
「一位の丸一日AV動画鑑賞会には文化祭の出し物として、とてもじゃないけど、許可出せないよ?」
君と二人きりでなら思う存分楽しみたいけどね?
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