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小ネタ-文化祭コスプレオマケだゾ-高校生ver

「やっばーーーーいッ、冬森ってば最っっっ高、お願い、一発抱かせて!!!!」 多くの生徒が心待ちにしていた文化祭。 目玉イベントは各クラスから代表者を選出して美を競うミス(?)コンだった。 ちなみにここは男子校なわけで。 「夏川うるせぇ」 クラス全員参加のジャンケンで惨敗してしまった冬森は、なりたくもなかった代表者になり、本日、女装していた。 「大体一発ってなんだ、あ? クソ図々しいンだよ、あ?」 クラス代表に張り切って立候補、ぶりっぶりのメイド服を着こなしてメークもバッチリしている夏川の胸倉を掴み、冬森は凄む。 褐色肌に純白のミニスカナースコスプレ。 さもおばかそうなカラーに染められた頭にはナース帽。 ついでにオモチャの聴診器。 ガーターストッキングで眩い絶対領域発生中。 ちゃんとそれっぽい白サンダルも履いていた。 「この暴力ナースさん、むちえろスギッッ」 メークは断固拒否してスッピンでいるが、程よく肉付きのいい褐色えろあほボディにミニスカナースがよく似合う冬森に夏川は興奮が止まらない。 昼休憩を挟んで始まった文化祭午後の部。 各クラス代表者は体育館で行われるミスコンに向けてそれぞれ準備を始めていた。 「なんだよ、冬森、嫌がってた割に機嫌よさげだな」 冬森の教室にやってきた春海、チョコバナナを吟味しつつ、自分に果敢にひっつこうとしてくる夏川の頭を鷲掴みにしてニヤニヤしている冬森をパシャリとスマホで撮影した。 「春海、僕も君がチョコバナナを食べているの撮影してもいいですか?」 春海の隣には、過半数の生徒に推薦されてクラス代表を引き受けた、クールビューティー眼鏡女医なる秋村がいた。 「全アングルから撮ってもいいですか? まずは真下から」 「写真撮影お断り」 「そんな、つれないこと言わないでください、春海」 化学部から借りた白衣。 際どいスリットつきのタイトなスカートに網タイツ。 整ったイケメンフェイスのおかげで黒髪ロングのウィッグが凄まじく様になっていた。 「眼福だなぁ、冬森君。こんなナースさんなら逆にお注射してあげたいなぁ」 冬森の担任、のほほん村雨はセクハラ発言を平然とかましている。 「おーーーい? 俺の冬森にセクハラしてんじゃねぇぞ、このゲス教師?」 「夏川君もよく似合ってるねぇ。かわいいかわいい」 「ッ……べ、別にゲス教師のために力入れてメークも女装も頑張ったわけじゃねーし!?」 「そこまで反応されると逆に素直だねぇ、ふふふ」 「ふっ、ふふふじゃねぇ!! ふふふすんな!!」 自爆している夏川を村雨に押しつけ、冬森は、雑然としている教室をぐるりと見回した。 「なぁ、冬森、天音ってどこ行ったんだ?」 春海に問われて冬森は肩を竦めてみせる。 「俺が聞きてぇよ」 昼休憩で食事を一緒にとった後、姿が見えなくなった愛しのクラスメート。 生徒やら一般客やらの視線をビシバシ浴びながらも特に恥ずかしがらず、顔見知りの他校の女子に声をかけられても「今急いでっから」と聞き流し、文化祭に活気づく校内を歩き回って。 冬森は彼を見つけた。 「あーまーね」 渡り廊下の窓から外を眺めていた天音は僅かに肩を震わせた。 冬森の方へ視線を向け、黒縁眼鏡の下で純和風まなこを限界いっぱい見張らせた。 「冬森、なんて格好してるんだ」 「だからさぁ、言ったろ? ジャンケンで負けたから女装してミスコン出なきゃなんねーの」 「スカートの丈が短すぎる」 「お前、どっかのギャルのとーちゃんか」 渡り廊下を歩く者らの視線を相変わらず集めているナース冬森。 黒セーターを着込んだ天音は注目を浴びている同級生彼氏に気が気じゃない。 「その格好でミスコンに出るなんて危険過ぎる」 「はぁ? 危険? なにが?」 「下着が見えてしまうんじゃないのか」 「だいじょーぶ、だって下着履いてねぇし、ノーパンだし」 「ッ……ッ……ッ」 「悪ぃ、今のはウソ、んな動揺すんな」 そう言いつつも動揺している天音がかわいくて、えろあほナースな冬森は窓ドン、した。 「やっぱお前も俺にぶっとい注射打ち込んでやりてぇとか思う?」 どえらく生意気そうなふてぶてしい目に上目遣いに見つめられて天音は答える。 「俺はそういう免許を持っていないし、冬森は注射が苦手そうだから打ちたいとは思わない」 曇りなきまなこでいる天音に冬森は笑った。 「さすがお真面目で堅物な天音サン」 「冬森、俺を馬鹿にしているだろう」 「してねぇって。ん。そろそろ体育館移動しなきゃだな。お前も応援来いよ、ぶりっこメイドと女医にだけは負けたくねぇ」 窓に背中を張りつかせた天音の肩をポンと叩き、ミスコン開始が迫りつつある体育館へ向かおうとしたら。 「待って」 天音は冬森の手首を咄嗟に掴んだ。 意外なくらい強い力で掴まれ、ちょっと驚いた顔で振り返った冬森に言う。 「出ないでくれ」 「は?」 「ステージに立たないでほしい」 「いや、だって俺が出なかったらウチのクラス失格なんだろ」 珍しく無責任発言をかました天音は呆気にとられている冬森を覗き込んだ。 どこか苦しげに眉根を寄せ、日焼けに疎い頬を仄かに紅潮させ、冬森の両肩をぐっと掴んだ。 「失格になればいい」 生徒や一般客の行き来がある渡り廊下。 このまま抱き締められるんじゃないかと冬森は思った。 だが、さすがに天音はそこまでしなかった。 ただ、密やかな声で冬森にだけ届くよう正直な気持ちを告げた。 「もうこれ以上、冬森をみんなに見られたくない……」 「優勝もらえて嬉しいです、こんなわたしが一番になれたのは、ここにいるみんなのおかげです!!!!」 ミスコンでは夏川が見事グランプリを獲得した。 「冬森はどこに行ったんでしょう」 ステージ上、体育館に集まった客の歓声を浴びてご満悦な夏川の背後で、準グランプリの秋村は肩を竦め、文化祭企画委員として付き添っていた春海は「大方、天音を道連れにしてどっかでサボってんだろ」と同じく肩を竦めてみせた。 まぁ、実際にはその逆で、天音が冬森にミスコンボイコットをさせたわけで。 「お前に独り占めされてやるよ、天音」 制服に着替えた冬森と天音は学校を抜け出して馴染みのパン屋に向かっていた。 「パン買ってどっか日当たりいいあったけー場所で食ってゴロゴロしてから学校戻っか」 快晴の空の下、冬の兆しがちらつく風を浴びながら二人で並んで歩く。 「で、どーだったんだよ、俺の女装は。まだちゃんと感想聞いてねぇぞ」 「あんなの過激過ぎる」 「もうすぐハロウィンだしよ。俺にしてほしいコスプレとかねぇの?」 「特にない。俺には普段の冬森で十分だ」 「ッ……言っとくけど俺は違うからな、ナースだってアリだしメイドでも余裕だし女医なんかヤベェし、でもやっぱお前根が古風で和風だから巫女さんとか見てぇかも、てか全部見てぇ」 「何の話をしてるんだ、冬森」 自分の女装を期待している冬森の欲望を天音はてんで理解できない。 「今日秋村が着てたやつとか入んじゃねぇの」 なんてことはない会話に集中する余り、擦れ違う通行人や電柱にぶつかりそうになる冬森をその都度抱き寄せて、天音はそっと思う。 せっかくの文化祭なのに、わがままを言ってごめん。 だけど、今、こどもみたいにワクワクしてる。 冬森を独り占めできて、こんなにも嬉しくて堪らないんだ。

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