(最後までやってるだけです(笑) お好みでどうぞ) 数秒か、数分か。どのくらいたっただろう。 混じりあった唾液が糸をひき、それを口内ごと絡めとられた感触と同時に体の上の重みが無くなった。 次に、暫く体内に居座っていた後ろの玩具が抜かれる感覚に腰が跳ねた。 キスで惚けた頭がようやく覚めてきて、何度目かの身をよじると、頭上の手のネクタイがほどかれていた。 それでも相変わらず拘束具のあられもない自分の格好は誰得なんだと一瞬うんざりしたが、正直な体は元気なようだ。 「ぁ...っ、く...」 そうこうしているうちに、淡々とさっきの先走りを後ろに塗りこまれ、指を軽く抜き差しされた。 初めてではない。慣れた手つきでこねられるとゆるゆると前が持ち上がっていた。 意地悪く第一関節くらいまでしか入れてこない。前立腺まで到底届くわけもなく、さっきまで玩具に刺激され続けていた為もどかしくて仕方なくなるのは生理現象だ。 モノ欲しげな顔をしていたつもりは無いが、目が合うとふわりと笑われた。 「なんか欲しそうだけど？言ってみてよ、あげるから」 「......なっ...べ、べつに俺は...」 「あっそう」 手をぱっと離されると襲った下肢の寂しさに、腰と後ろがもどかしく動いた。 なんなんだこれ。全く。 そもそも俺は年上だし、直系ではないけど元王子だし、体つきだってモノだって勝ってるってのに。 心の中で、悪態をついてみるのはいつもの事だ。 「....ゃくっ...........て、くれ....」 いっつも呼び付けられて。 「......くだ、さい...」 パシリにされて。 「なにを？どこに？」 冗談じゃねえ。 「！！......ま、まこと...の...俺の..」 「聞こえないけど」 「…...ケツに.....ほし....」 「ふふっ...耳まで真っ赤」 天使のような微笑みで頭を撫でられた次の瞬間、先程の低周音を放つ玩具を乱暴に押入れられる。その直後に間髪入れず真琴のものが侵入してきた。 性急に動かされ展開の速さと待ち望んだけれど予想だにしない刺激にくらりと目眩がした。 「まて...っ、いま、何入れた...！」 「え、何？」 「は...ぁあっ！」 異物とモノが別々に動いている。 真琴が腰を引くと玩具も動き前立腺を掠めると甘い刺激が強烈に襲う。それが過ぎると真琴が押し広げて進入してくる。 その繰り返しが気持ちよくて意識が飛びそうになった。 「お願いするだけでヒクヒクしちゃって、こっちが恥ずかしいんだけど」 「ちょっ…あっ！…」 「...あっ、これ、気持ちいい...はぁっ」 「っ...ぁっ...あぁっ...はんっ...」 「よだれ...そんなに、いいのっ...？」 「ぁあっ！...んっ...ぃいっ...！」 ねっとりと抜き差しされるとそれにあわせて中がかき乱される。 こうなるともう、理性がどうにかなりそうだ。 上で息をあげてゆく真琴。 室内に水音と破裂音が執拗に響いて、快楽の痺れに支配された頭の中は白んで馬鹿になる。 夢中で繋がって、動いて、迫り来る切ない感覚に真琴の背中に爪を立てると手首を押さえつけられた。 「痛いよ？おしおきっ...」 一層強く突かれると振動と絡んでだらしない声が出る。 真琴の興奮している端正な顔はいやに色香をはらんで、心臓ごと突き上げられる。 「...くっ、やば..っ....澄快...一緒に...」 その瞬間パチンとリングが外された。 一気に何かが流れ込む感覚に目の前がチカチカする。 それを直に扱かれて。 声を抑えるのも忘れ、激しい刺激に脳を震わせて、 熱い感覚と同時に意識を手放していた。 *** 「ぃ..す...ぃ....起きなってば」 「ぅ......だあぁ！！」 窓からの暖かい日光。 小さく聞こえた澄んだ声に一瞬微睡んで、弾かれるように跳ね起きた。 「やっと起きた。主人のベッド陣取って随分な犬だね。僕はもう公務に行くけど」 「ちょ...！ま...！」 勢い余ってベッドから転がり落ちる。 打った腰に走る激痛に悶えると、冷たい目で見下ろされた。 「僕は1人でも大丈夫だし」 「...いや！いくって...」 「...来られたら迷惑。でも呼んだ時は1分で来ること。」 「...なんだよそれ」 「分かったら大人しくベッドに上がって。命令。」 大人しく従うと、フンと鼻を鳴らされた。 掃除しといてと一言言い残し出ていく真琴をぽかんと見つめて、ふいに首に触れるとテーピングがしてあり、太腿にも同様にテーピングが施されていた。 部屋の隅で蠢く蜘蛛は、今日も狭いケースの中で元気に巣作りに勤しんでいる。 ベッドにもう少しだけと、身を預けてみると、ふわりと真琴の甘い匂いがして、重圧に比例しない細い肩を思い出していた。 数奇な運命が生んだ妙な関係。 幸せとは言えないけれど、それでも何か意味があると思いたくなる。 憎しみだとか、抹殺だとか、孤独だとか、せめて数秒ずつだけでも真琴の頭の中から無くしてやれたらと思う。 犬だから。何でもする。 それで救うことが出来るなら。 捕まえられない真琴と繋がった匂いも微かに感じながら、もう少しだけ瞼を閉じた。