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アイドルオタクは推しに弱い
キラキラの舞台……キラキラの男の子達が歌って踊って、夢を与えてくれる。
俺がアイドルグループ・エーデルシュタインのファンになったのは、小学六年生の時。
まだ彼らはデビューしたてだった。姉の付き添いで小さなステージで握手イベントに行った時、俺はこんなにキラキラしてる人達が実在してるんだと感動した。
そして、金水 翼 くんと握手した時……
『筋肉結構ついてるね。何かスポーツしてるの?』
『あ、えと……水泳してて……』
『そうなんだ!俺も小学生の時水泳やってたんだ。頑張ってね』
優しい笑顔。温かい手。
今時珍しく髪を染めず真っ黒な髪で、涼し気な目元がクールなイメージなのに、話すととてもフレンドリーで優しい。
そんなギャップにやられて、ファンクラブに入り、ライブに行ったり、イベントに行ったり……ファン歴も四年になる。
あの時、中学二年だった翼くんも高校三年生。
俺も高校生になった。
仕事も勉強も頑張ってる翼くんを今でも応援してる!
「あー……翼くん、かっこいい……この、『Amazing☆』のソロの所が超かっこいい!!なぁ!晶もそう思うだろ!?なぁなぁ!!」
最近、発売されたライブDVDを連続三回見ている。
俺の部屋のベッドで寝ながら、スマホゲームに興じている茶髪のチャラ男……俺の幼馴染、進藤 晶 は「あー、そうな」と適当に流す。
「あとな、この後の『感じてる、この胸の高鳴り~♪』の所もかっこいい!!まぁ、総じてかっこいいって全俺が言ってる!!」
「お前……宿題教えろって言っといて、何でライブDVD見てんだよ」
「だって、家に帰ったら届いてたんだもん」
晶は、はぁ……とため息をつき、数学の教科書を開ける。
「宿題やらねーの。今すぐ、DVD止めねーと俺帰るぞ」
「えー……あと二回見ようと思ってたのに……」
「帰る」
「嘘!止めます!!宿題終わったら見ます!!晶、行かないでー!」
帰ろうとする晶の服の裾を掴み、何とか引き止める。
チャラい感じだけど、頭は賢いし、運動神経もいい。人付き合いは苦手らしいけど。
小学生の時から一緒にスイミングスクールにも通って、中学は同じ水泳部だった。
晶は東陵学園のスポーツ科にも行けるくらいだったのに、同じ普通科に進んだ。
「晶は……何でスポーツ科に行かなかったの?推薦もらえたんじゃねーの」
因数分解の問題を解きながら、晶に疑問をぶつけてみた。
「俺の肩のこと……気にしてる?」
「別に……。スポーツ科行くほど、水泳が好きなわけじゃないし、めんどくせぇし。泳ごうと思えば、プールでも泳げるだろ」
「まぁ、そうだけど……」
「それにお前みたいなバカをほっとけないしな。……問三、間違ってるぞ」
「え!?」
ノートを見ても、間違いが全く分からん……。
もう一回解き直しても分からん。
俺が教科書とノートを交互に見ていると、晶がクスクスと笑う。
「本当にほっとけねぇ……」
その呟きは、俺には全く気づかなかった。
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