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「おはようございます」
一晩で昨日のことは昇華して何事もなかったかのように振る舞う。まぁ近しい人にはわかってしまうかもしれないが…
「おはようございます。副支配人」
「おはようございます。白鳥さん。その呼び方なんか違和感すごい…」
「だってそれが役職ですもの」
いつもと変わらず気付かない振りしてくれるのがありがたい。白鳥さんと仲良くなれたのはそういうところかもしれない。いつも綺麗にしてるけど高飛車な振る舞いは一切無い。親しみやすく友人もとても多かったのにずっと俺たちのことも気遣ってくれた。
「…万里…支配人は?」
「もうすぐ来られますよ」
「一緒じゃないの?」
「えぇ。私たち夫婦ではないもの。帰る家は違うわよ」
「え?」
「…結局ねあのあと双方で話し合って婚約破棄したの。私も万里も未だに独り身よ」
「…」
「…千里くん…あのさ…今日仕事終わったら時間もらえるかな?」
「わかった」
「ありがとう」
白鳥さんがどうして結婚したということにあの時否定しなかったのは本当のところはわからないけど…昨日の万里も奥さんがいるのにっていう言葉は否定しなかった。
一体何がしたいんだろう…わからないけれど…
取り敢えず仕事に取りかかった。
ここのオープンは三ヶ月後。社員の教育などを行いオープンに備えるのだ。
万里が管理していたあのホテルより規模は少し小さいので観光客向けとは言えないかもしれない。
ビジネスシーンで利用する客が多いだろう。
内装はシンプルでスタイリッシュで落ち着いた感じ。
一呂みたいな感じの人が似合いそうなとこ。
一呂は俺たちの中で一番背が高くてほどよくついた筋肉。スタイル抜群だった。
シックな装いがとても似合う。顔も整っているので何着ても似合うけど。
百はおバカで素直なワンコ。誰からも愛されるやつだった。
万里より少しだけ背が高くて黙ってればいいのに喋りだしたら印象が違いすぎる。
カジュアルな格好が良く似合ってて喋らなきゃモデルのスカウトも受けたことがあるくらいの容姿をしている。
ただ一呂がいつも隣にいたからその容姿も霞んじゃうけど
万里は…あぁ…だめだな…昔を思い出してしまった…
楽しかったな…四人でバカやって笑って…喧嘩して仲直りして…
とても…とても楽しかった…
考えるのをやめたくて仕事に集中することにする。暫くすると万里がやってきた
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