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あの人と出会ったのは高校受験前。
僕は家柄のこともあり、名門だと言われるところに幼稚舎から通っていた。だけど他の世界も見たくなった。だから高校からは違うところに行こうかと考えてるとき様々の高校を見学しに行ったのだ。
敷地内には日当たりがとても良くて明るい広い図書室があった。その一番奥の端っこの机に美しい姿勢で本を読んでいる人を見つけた。
他にも人はいるのにそこだけ何だか切り取られてきた絵画を飾ってるように見えるくらい美しい光景だった
ページをめくる長い指に釘付けになった。
あの長い指で触れられたら…なんて邪なことを考えていたら彼がふと顔を上げこちらに視線を寄越した
逃げ出すのもどうかと思うしかと言って話しかけるのも戸惑われた。どうしていいかと戸惑っていると彼は本を閉じこちらへ歩み寄ってきた。そして耳元で囁いた
「そんな熱い目で見られたら穴あいちゃうよ。ふふっ」
その笑顔はとても妖艶だった。自らが美しいことを自覚しているのだろう。自信に満ちた表情に思わず腰が抜けてふらついた。そんな僕を簡単に支えられる力強さにドキリと胸が鳴った
「おっと…大丈夫?ちょっと刺激強かった?」
そういうと今度はあどけない顔で笑う。
「あの…あまりにも…美しくて…見惚れてました…失礼なことをして申し訳ありませんでした。不快でしたよね?」
「…うーん…君みたいな可愛い子ならどれだけ見られても構わないけどね」
長い指で顎を掬って至近距離で見つめられた
「あの…」
「ははっ。顔真っ赤…俺の顔好きなの?」
「…美しいと思います」
「…中学生?受験するの?その制服あの名門中学でしょ?」
「…はい」
「俺は久遠寺。久遠寺 史澗 。高等部1年だよ。君は?」
名前を名乗ることには戸惑う。僕の家は今や世界でも知らない人の方が少ない大企業と呼ばれる家。
これまで出会ってきた人たちは自分ではなくその企業の御曹司って感じで見てきてたからあまり名乗りたくはなかった。だけど…この人と仲良くなりたい…できれば僕の事を見てもらいたい…そう思って…
「東雲…東雲 垓です」
「東雲ってあの?」
「はい…多分…」
「へぇ。そうなんだねぇ」
やはりこの人もそういった人たちと同じなんだろうか…このあと人の顔色をうかがい始めたりするのだろうか?
「そっかぁ。東雲の社長さん綺麗な顔してるもんねぇ。お父さん似?」
「あ。そうかもです。いつもそう言われるから」
「そっかぁ。じゃあ垓くんはこのまま成長していくとすっごいいい男になるんだ?えぇ!ちょっと楽しみ」
「父と繋がりができるからですか?」
やはり父との伝手がほしいんだなって解釈した僕はそんなふうに可愛くない受け答えをしてしまった
「えぇ?本当に申し訳ないけどあまりその業界興味ないんだよねぇ。ごめんねぇ。俺は研究とかしたいんだ。好きなことのね。だからあまり接点はないから正直垓くんが東雲だろうがどうでもいいかなぁ?ごめんねぇ。本当に失礼で」
その言葉に何だか嬉しくなった
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