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 翌日、午後6時。  朝まで抱かれ続けた珠一は、ようやっと重い腰をあげてリビングの後始末を始めた。  泰示は1人だけスッキリして昼前には自分の家に帰った。というか珠一が殺気だけで追い出した。  喘ぎ続けた珠一の声は枯れて「はぁ」というため息も(かす)れてしまっていた。 (最悪…ソファもシミげなついて…あああ!カーペットも精液でガビガビやし!)  泰示への怒りを抱きながら掃除を続けていると、玄関のドアが開く音がした。 (え⁉︎俺、あん馬鹿追い出したあと、鍵かけたはずなんやけど…空き巣⁉︎)  そう思い珠一は左手で腰を押さえながら、右手にお盆を持って玄関にそっと向かう。真っ暗だった玄関の照明をつけると、大きなリュックを背負った泰示がヘラヘラと笑って立っていた。 「は…な……あ、え…」 「帰ってからオカンと喧嘩して出てったき、冬休みん間泊まらせちくれん?」 「お……〜っ⁉︎」 「家事はできんけど食費とかは出すき、ね?お邪魔しまーす。」  口をパクパクさせて顔面蒼白、珠一の言葉は言葉を成していないのに、泰示は会話を成立させてしまう。そしてズカズカと我が家のように靴を脱いで家に上がった。 「あ、ベッドは一緒でいいけんね、ご奉仕しちゃるばい、珠っちゃん♡」  安東珠一、平成最後の年末年始は心安らかに過ごせない事が確定した。 (ふざくんな!こん駄犬があぁぁぁぁああああああ!)  【終】

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