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第1話
「天心 ……っ、好きだ、好きだ、挿れたいっ」
志童 の甘ったるい声が、直接的な欲望を訴えてくる。
実家の2階、教科書やマンガの並ぶ自分の部屋で、俺はコイツに追い詰められていた。
ガキの頃は金魚のフンみたいにあとをついてきていたコイツが、こんなふうになるとは思いもしなかった。
お互いに十八歳の誕生日を過ぎた今、志童は俺より頭ひとつ分も背が高い。
「何考えてるバカ」
腕を突っ張って巨体を押しのけようとしたが、俺の背中が磨りガラスの窓に押しつけられただけだった。
ハッとして後ろの窓枠に腕を突く。
その間にヤツは片ひざを俺の脚の間にねじ込んできた。
ヤツの高ぶったそれが、俺の太腿の付け根に密着する。
張り詰めた硬さと熱にぞくりとした。
「し、志童……」
見上げると、熱に浮かされたような瞳と目が合う。
「俺、バカだけど本気だから」
熱い息を吐き出し、志童が耳元に唇を押し当てた。
「だからっていきなり犯そうとすんな!」
「だって、離れるなんて耐えられない! 天心と一緒になりたい」
コイツは、今ここで思いを遂げれば二人一緒の未来が手に入るとでも思ってるんだろうか。
明日には俺は大学進学のため、このド田舎を離れ東京へ向かう。
一方の志童は家の都合もあって、地元の大学への進学が決まっていた。
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