110 / 111
エピローグ
月曜日。
学校に行くと、クラスメイトと宿題を写したり写させたりして時間を潰す。
1、2時間目の授業を受けたら、廊下に出てSHRまでの時間をダラダラ喋って過ごす。
目の端に、2年1組の教室に名簿持って入っていく大竹の姿を捉える。
一瞬だけ、目が合う。
2人は誰にも気づかれないように、目の奥で笑い合った。
「ほら、出席取るから早く席に戻れよー」
担任の声がして、設楽も慌てて自分の席に戻った。
ズボンのポケットの中の結晶を、ケースごと握りしめる。
大竹が作った結晶だ。アクアマリンの色をした結晶が、透明な結晶に巻かれている。
初めて2人でキャンプに行った後、大竹が設楽のことを考えながら作った最初の結晶を、あの後、持っていろと渡されたのだ。
アクアマリンの結晶は、設楽なのだと言っていた。ならば、アクアマリンを包んでいる透明な結晶は……。
「設楽ー。なにニヤニヤしてんだ。気持ち悪いから、さっさと席に座れー」
「あ、はい!すいません!」
もう1度、ポケットの中の結晶を握りしめる。
ここに確かな気持ちがある。
長い一生を一緒に過ごそうと言ってくれた、大竹の気持ちがここに。
だからきっと、卒業までは、あっという間────。
ともだちにシェアしよう!