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第4話

 ジークフリートの使い魔――「正義」のアルカナの名は、シルヴェストルという。その姿は騎士を模しており、まさしく「正義」といった風貌であった。しかし、ジークフリートの前での彼は、騎士とは到底呼べないだろう。主の命に従おうとしないのだから。 「北西の村――ロッホでの魔女狩りに、来週向かう。シルヴェストル、おまえもついてこい。あそこの長は随分と「魔」に汚染されていて、少し厄介かもしれない」 「……お断りします」 「……また、俺に従わないのか」  ジークフリートは相変わらず命令に従おうとしないシルヴェストルに、苛立ちをみせた。「正義」の化身である彼が人殺しに手を貸すことを喜んでやるとは思えない。しかし、ジークフリートは彼のことをどうしても従わせたかった。  ジークフリートはシルヴェストルに迫ると、じっとその目をのぞき込む。心の接続が成っていない今、彼の考えていることはわからない。しかし、その瞳からは――どうにも、自分への反抗心のようなものは、見えてこない。 「一応聞いておこうか。何故、従わない」 「……たくさんの人を殺すのでしょう。貴方は、それを正しいと思っているのですか」 「問に問で返すか、使い魔。まあ、いい。……思っている、そう答えれば満足か?」 「……大いに不満足です。私が貴方に従う道理はありません」  心を覗こうとしているようなその瞳。揺るぐことのないその瞳は、ジークフリートの顔を映している。  どうしても従おうとしないシルヴェストルに、ジークフリートは激しく憤りを覚えた。なぜ彼が従わないのかもわからない、なぜそんな――人の心を覗こうとしている目をしているのかもわからない。しかし、「正義」のアルカナが自分に従わない、その事実が何よりもジークフリートにとって不愉快で、その怒りが理性を焼いてしまう。 「ああ、そうか。じゃあ、無理矢理従わせてやろうか、今度こそ」 「……っ、そ、それはやめてください……! あんな、……あんな、私の矜持を辱めるような……」 「――おまえは俺の矜持をへし折っているんだろうが!」 「うっ……」  ジークフリートはシルヴェストルの腕を掴み、強引にベッドにその体を引き倒した。勢いよくベッドに叩きつけられたシルヴェストルは、怯えたような目でジークフリートを見上げ……そして、「やめてください……」と弱々しく呟く。  魔術師から使い魔への性的接触は、使い魔にとって強烈な快楽になる。それは、使い魔が魔術師に愛されることを悦ぶ生き物だからだ。魔術師が優秀であればあるほど、使い魔は魔術師からの愛情に酔うのだが――ジークフリートは、最上位の魔術師。彼に抱かれて幸福を覚えない使い魔など、存在しない。シルヴェストルもその例に漏れないはずなのだが――必死に、抵抗する。どんなに感じても、絶対にジークフリートの命令には従わない。 「俺のことが嫌いか」 「きっ……きらいです、……「正義」のアルカナとして……あなたのことが、大嫌いです……!」 「は、そうかい。体は……こんなに俺のことが好きなのに」 「あっ、ぁあっ……」 「いい子だ、シルヴェストル。今日はおまえが腰を振れ」  ジークフリートはシルヴェストルの服を剥ぐと、騎乗位の体位を取らせた。シルヴェストルは顔を真っ赤にして「いや」と言っていたが、キスをされながら誘導されていけば、いつのまにかされるがままにジークフリートの腰に跨っていた。 「あっ……」  なかに、ジークフリートのペニスをいれられ。そうすれば、主人に抱いてもらっているのだと、全身が悦びの声をあげる。肌が粟立ち、穴という穴から汗が吹き出し、勝手に体が反って……彼のペニスの熱を、享受する。 「ジークフリート、さま……」 「いい顔だ。よし……腰を動かしてみろ」 「あっ……」 「止まるな」 「あっ……あっ……ジークフリートさま……」  シルヴェストルは命令されるがまま、淑やかに前後に腰を振る。羞恥に頬を染め、瞳を濡らし。すでにシルヴェストル自身が零した蜜でぬるぬるになった結合部は、動くたびにくちゅくちゅと秘めやかな音をたて、その音もシルヴェストルの羞恥心を煽る。  動くたびに、じん……と波紋のような熱が下腹部から脳天まで広がっていった。そうすれば腰が砕けるような感覚にさいなまれ、シルヴェストルは腰を振りながら何度もふらついた。しかし、休もうとすればズンッ! と下からジークフリートに突き上げられてしまうため、腰を振り続けなければいけない。快楽と屈辱の狭間でぼろぼろと涙を流しながら、シルヴェストルはジークフリートの上で淫らに揺れる。 「あっ……はぁ……あっ、あっ……もう、だめ、……うごけません……ジークフリートさま……」 「大して動いていないだろう。今度は上下に腰を振れよ」 「そ、そんなの、……むりです……」 「じゃあ俺が突き上げてやろうか?」 「……っ、や、やります……やりますから……」  ジークフリートはにっと笑ってシルヴェストルの羞恥心を煽る。より、シルヴェストルを辱めてやりたかった。主人の命令に従わない使い魔に、立場というものをわからせてやりたかったのだ。  シルヴェストルは顔を真っ赤にしながら、そっとジークフリートの腹に手をつく。そして、ゆっくりと腰をあげると……ずぶぶ、と腰を下ろしていった。 「あ……」 「気持ちいいだろう? ナカがしまったぞ」 「……っ」 「ほら、続きをやれ」  シルヴェストルは恥ずかしそうに唇を噛みながら、ず、ず、と腰を上下し始めた。奥にズンッとくる感覚が善いのか、ペニスを飲み込むたびに恍惚として甘い吐息をこぼす。  自分の上で乱れるシルヴェストルの姿に、ジークフリートは満足したように嗤った。時折腰や尻肉を撫でて煽ってやればトロンとした目で見つめてくる彼が、愛らしく感じる。    このまま、酔わせてやれ。このまま、堕としてやれ。従え、俺に従え――「正義」の化身よ! 「あっ、あぅっ……んっ、く、……じーく、ふりーと、さま……もう、だめ……もう……おれ、……」 「ああ、そうか。もういいぞ、シルヴェストル、よくがんばったな。じゃあ、ここからはご褒美だ」 「え、……――アッ、……アッ!?」  くたくたになって動けなくなってしまったシルヴェストルを、ジークフリートは勢いよく突き上げてやった。シルヴェストルは突然の強烈な快楽に耐えきれず、ビクンッ! と体を跳ねさせたあと、がくんとジークフリートに覆いかぶさるようにして倒れ込む。ジークフリートはそんな彼の唇を奪ってやると、そのままズンッ、ズンッ、とシルヴェストルを思い切り突き上げてやった。 「んっ、んっ、んっ、んっ」  シルヴェストルは苦しそうにしていたが、ジークフリートからのキスが心地よいのか、シーツに手をついて自らも唇を押し当ててきた。ジークフリートがその口に舌をねじ込めば、彼も舌を絡めてくる。  次第に素直になってゆくシルヴェストルに、ジークフリートは達成感を覚えて、乱暴気味だった抽挿を穏やかにしてゆく。とぷん、とぷん、とゆっくりと突いてやれば、シルヴェストルは甘ったるい声をあげて自らも腰を振ってジークフリートを求めてくる。 「じーく、ふりーとさま……」 「ん、……よし、このまま俺のことを見ていろ」  息苦しさに唇を離し、息のかかる距離で見つめ合う。そのまま腰を振れば、シルヴェストルは悩まし気に眉を寄せながらも、濡れた瞳で必死にジークフリートを見つめ続けた。 「あ、……あ、……」 「……、はぁ、……だすぞ、……シルヴェストル、」 「はい、……はぁ、はぁ、……あっ……、……ん、……」  結合部が蕩けるように熱い。柔らかく熟れた肉壁が、ジークフリートのペニスに絡みついて、純情に熱を求めている。  ジークフリートはぐ、とシルヴェストルの尻肉を両手で掴み、腰をぐんっと押し出した。「あっ……」と切なげに声をあげたシルヴェストルにもう一度口づけをして、そしてそのまま――なかに、精を吐き出す。 ――『■■■■■』 「……っ」  その瞬間、シルヴェストルは溶けるような幸福感と共に――強烈な、「念」を感じた。何が起こったのかと、シルヴェストルは一瞬戸惑ったが……それが何なのか、すぐに、理解する。  ――一瞬。ほんの、一瞬。ジークフリートの心と接続したのだ。  しかし、それを理解して間もなく、体が絶頂に突き落とされる。魔術師の精液は、使い魔にとっての何よりの媚薬。これをなかに出されて、正気を保っていることは難しい。 「あぁッ――……」  シルヴェストルは頭が真っ白になるような快楽と共に、意識を失っていった。すうっ、と思考が堕ちてゆく中――一瞬聞いた、ジークフリートの声を思い浮かべる。 『――俺は本当に、正しいのか』

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