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第6話

――ああ、どうしておまえは笑う。どうしておまえは俺を許す。俺はおまえを、死に導いたというのに。  王は、自らの力を誇示することに執着した。それゆえに、疎んだ一族がある。クラインシュタイン家と並ぶ魔術の名門・アイゼンシュミット家。魔術師としての権威をアイゼンシュミット家に奪われることを恐れた王は、アイゼンシュミット家に冤罪を被せ、ジークフリートに一族を魔術を用いて惨殺させた。  そのときから、ジークフリートは自らを「国のために心を殺して生きる怪物」とした。国によって邪魔なものは、殺す。どんなに残酷な手段をとってでも、殺す。  しかし、ジークフリートも、根はただの人間だ。人殺しを悦とするような、歪んだ人間などではなかった。人を殺すことに、迷いを感じることも、もちろんあった。  迷いを捨てねば――そう決意したのは、親友が死んだとき。ジークフリートが消したアイゼンシュミット家の唯一の生き残りであった青年が、ジークフリートの魔術の後遺症により死んだとき。彼は――家族をジークフリートに殺されながらも、ジークフリートを友人として慕ってくれた男だった。  彼は、言ったのだ。 ――俺はね、ジーク。おまえが生きた人生を、否定しない。俺を殺したことを、悔やむな。それは俺への侮辱になる。俺と友人で在り続けるのなら――俺の死も、必然だと受け止めろ。おまえが生きるなら、俺は死ぬ運命なんだ。

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