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※第5話

イーグルは肩を壁に押し付けられるように押さえ込まれ、長身の彼を見上げた。 ジムは空いた手で真ん中の階のボタンに触れてエレベーターを動かすと、真意を探るような碧い瞳でイーグルを覗き込む。 「抵抗して人目につくのも、下手に目立つのも嫌だからな。俺はココがどこかもよく分からないし、探してる人もいる。思えば現金は少ししか持ってないし、それがここで使えるかもわからない。アンタの言うようにどこかで身包み剥がされそうになるかもしれない。それに……アンタが、そんな悪いヤツに見えないから」 「………へえ」 イーグルの言葉に、ジムは鼻を鳴らして掌でイーグルの頬を包みこんだ。 表情がきっと切り替わり、何故か眸のなかに苛立ちを含んだような光を帯びる。 「オマエ、人に裏切られたことねェのか。ムカつくな」 覗き込む瞳の色が、翳りと怒りを混濁させてギラリと光り、一瞬だけその豹変にイーグルは怯んだ。 ………怒ってるのか………? なんかこいつの地雷でも踏んだか、俺。 怒りの理由もまったく分からず戸惑い、狭い空間に重い沈黙が流れる。 機械音が響きエレベーターが止まると、開いた扉の先はそのまま玄関となっており、ジムはそのまま更に強い力でぐいぐいとイーグルを引っ張り部屋の中へ連れ込んだ。 「痛ぇって、ンなに怒んなよ。利用するのが不快だとか思うなら、ここからすぐ出ていくし」 脱臼しそうな程の力で腕を引っ張られて、イーグルは肩で息をつきぎりぎりと痛む肩に流石に憤慨して言葉を投げつける。 ジムはイーグルを寝室まで引っ張りこむと、そのままベッドの上に放り出して、無言でシワシワになったシャツを脱ぎ始めた。 「知らない人についてっちゃ駄目って親には教わらなかったか?見ただけで、悪人とか善人とか分かるの、オマエ。…………俺がいいひとのわけがねえだろ」 引き締まった上半身を晒して、ジムは冷たくとがった言葉を口にのぼせた。 「ついてって……アンタが引っ張ってきたんだろ、俺一人だってなんとか……んぐっ………ぅ」 ベッドの上に投げ出されて、憤慨した表情でイーグルが反論すると、すかさず口元を布で塞がれた。 押し倒すような体勢で上に乗り上げられて、漸く危険を感じてイーグルは押しのけようと腕を胸元まで突き出した。 ……なに………?………力………入らね…… 押さえ込まれた布の香りから、薬剤が染み込んでいることを悟り、彼は背筋を凍らせた。 いざとなれば、力づくで逃げようと思っていたのだ。 結構吸い込んじまった。これは……なんだ。揮発性の薬剤。 「安心しな、体に害も後遺症もない。単なる媚薬だ。まあ、ちっと強烈だけどよ。折角なんだしオマエも愉しめよ」 朦朧と脳髄まで痺れさせている感覚と、体が熱く疼きだす感覚がゆるやかな波のように訪れ、彼は息苦しさに胸を上下させた。 ジムは抵抗する力が奪われたことを確認すると、布を口元から外して、ぐったりとベッドに沈んだイーグルを静かに見下ろす。 見下ろす視線は冷たく、獲物を狩る肉食獣のように隙の無い表情を浮かべているジムを見上げて、イーグルはグラグラと霞む目を見開いた。 「俺は、オマエみたいな奴が大キライなンだよ」 ジムは、イーグルが着ているジャケットを引き剥がし、シャツのボタンを引き千切って肌を露にさせた。

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