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第4話
何だか怒った様な態度でずんずんと繁華街を闊歩するジムに、腕を引かれてイーグルはその背中を凝視する。
まあ、デルファのマシンだしな…………。あてにならないとはいえ、この太陽の近さは、元いた場所からは随分と飛ばされたことがわかるので、いい加減でもないか。
メティスは爆撃にあい、ヴィーナスの首都ではなくなってから久しい。
前を歩くジムと名乗った男は、黒い綺麗な髪をした、少し悪ぶっているが綺麗な顔立ちの男だった。
年はまだ十代か二十代前半くらいだろう。少しあどけない感じがしたか。
JE461年って言ったら、約37年前に飛ばされたって訳か。まあ、大体40年くらい飛んだし、とりあえず情報集めしないと、まったく右も左もわからない
こんな若者にどうして従っているのだろうかという、自分に対する疑問も浮かんだが、イーグルは、腕を引かれて歩く姿を見る周囲の目が気になって思わず俯き加減で歩く。
確かに土地勘もこの時代の知識も持っていない自分には、道案内くらいは必は不可欠なのだが。
このオニイサンは道案内にしては、持っている雰囲気がちょっと危険そうなんだよな。
「身包み剥がされて、売飛ばされるのは嫌だろ。アンタ、頭足んなそうだし、何も分かってないからさ」
口調はかなりぶっきら棒で、何故かどこか怒りを孕んでいるように聞こえる。
イーグル自身も分かっていないのは自覚している。
だけど、あんたも十分危険だと、ちょっと足りてない頭でも理解はできるぞ。だから離してくれねえかな。
と考えてから、ふうと深く息をついて肩をすくませる。
「まあ……そりゃあそうだけどさ。俺、そんなに頼りなさそうに見える?これでも、昔は優秀なウォーリアだって、傭兵関係者の中じゃ有名だったんだぞ」
いまはしがないお医者さんですが、何年か前までは戦闘のプロ集団の傭兵団に在籍していた。
昔と言ったが、この世界じゃ未来か。未来だな。
パラドックスにひとりで陥りつつ、イーグルはジムへ反論を飛ばす。
すると、意外そうな顔つきで振り返るジムの視線にぶつかって、イーグルは更に落ち込んだ。
「ハッキリ言うけど、頼りない。人を殴ったことも無さそうな顔をして、そんなホラ話を良く言うもんだと思った」
殴ったことどころか、色々してるんだけれどな。
肩を落としてようやく目的地についたようで、ジムはイーグルの腕を離す。
高層マンションの入り口に立つと、すっと扉に手を翳してDNA認証で開いたドアから中に入っていく。
イーグルは背中について中にはいりながら、この高層マンションの内のやつくりを確認し、かなりの高値の物件だということも把握する。
この物件を所有しているらしい、まだ年の若い男を不審そうに眺めた。
「随分いい所に住んでるんだな」
「…………ちょっとイカサマ賭博で儲けただけだ」
歯切れが悪く不機嫌そうに返った答えに、イーグルはきっと嘘なんだろうなと深くため息を漏らした。
まったく……どういう人間か読めない。
不思議と恐ろしいとは思わないが、若者が真っ当な生活をしているとも思えなかった。
大体職業もどんな人間なのかもまったく読めないのだ。
「あのさ、アンタもウォーリアって言うんだったら、少しはここまでくる間に、普通なら力で抵抗するもんじゃないか」
相手もイーグルに対して不審そうな眼差しを向けて、ぐいっとエレベーターへと引き込んだ。
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