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第8話

あのまま路上に放って置けなかったのは、ヤツがあいつに似過ぎていたからだ。 髪の色も違う、身体つきも違うのに、表情だけが似すぎていた。 失神するまで犯し続けた男の体を見下ろし、ジムはその顔の輪郭を辿る。 顔では無い。顔だとしたら、俺の方がもっと似ているだろう。 人を疑うことを知らない目も、柔らかくわらう表情も、俺がまったく持ってはいないものだ。 力を失ってベッドにぐったり沈んだ体の、下半身は精液と体液で無残に汚されている。 乱れまくって、最後にはいやらしいポーズまでして俺を誘ってねだるしまつなくらいの淫乱さまで披露してくれた。 ……ずっと、こうしたいと思っていた。身代わりにしたこいつには悪いけど、今のオレの目の前に現れた不運を呪ってくれ。 隣で気を失っている男に、汗で濡れた肌をそっと押し付け、目を閉じて淫らに体をくねらせて自分を求めた姿を思い返して口許に笑みを零す。 アイツも、同じようにしたら、あんなふうにいやらしくなっちまうのかな。 できやしないけど。 掌中の珠のごとく、大切にしているのに、自分で穢すなどありえない。 手を伸ばし煙草の箱を手にとると一本銜えて、ライターで火を灯す。 「なあ、イーグル、俺のモンになれよ……。そうしたら、俺は…………諦めてオマエで妥協してやるからさ」 もう、アイツに……こんな思いを抱かずにすむから。こんな苦しい思いをしないですむ。 きっとアンタだけにキモチをささげられる気がする。 ジムは聞いてはいないだろうイーグルの耳元でうなるように囁き、ぐっと拳を握り締めると灰皿に煙草を押し付けて、背中を向けて目を伏せた。

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