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第1話

俺は10歳の時にΩと診断された。 それから直ぐに性教育が行われた。 この世には男女の性とは別にα、β、Ωという性がある。 人口比はα2:β97:Ω1だ。 αは男女が6:4程度で男女共にα男性とβ男性以外の相手を孕ませる事が出来る性だ。 α女性に関しては孕む事も稀にだがある。 彼らの最大の身体的特徴は性器にある。 男女共に特大の外性器を持ち、Ωの発情(ヒート)を受け欲情(ラット)時での性交渉の際の射精時に亀頭球(ノット)で固定して、己のメスが逃げぬよう精液が漏れぬよう確実に孕むよう固定する。 性欲精力は強いが遺伝因子自体は弱く、全人口の2%程しか居ない稀な性である。 Ωのヒートフェロモンに誘引されてしまうので、望まぬ性交渉も多い。 そしてαという性は男女共に容姿や頭脳、運動能力に優れている為か御曹司や御令嬢が多い三高エリート達だ。 彼らαが世の中を動かす舵を握っていると言えるだろう。 βは世の中の殆どを占めていて、一般的な男女の性差しか持ち合わせていない。 彼らは最もシンプルな性であるが遺伝因子は非常に強く、全人口の殆どがβである彼らに数の力で勝る者は無い。 発情期に左右される事無く、安定して子孫を残せる利点もある。 αの作った流れを潤滑に従順に遂行する者たちで、αを崇拝する者達も多い。 見た目も中身も凡庸で、男女以外の性差を受け入れにくい保守的な性と言える。 Ωは男女比が3:7程度と差があり、男性型は少ない。 Ωとは産む性である。 外見に目立った特徴は無く、内性器が男女共に備わっている。 性交渉の際、女性型は膣が、男性型は肛門の奥の子宮が降りて、分泌液で肛門内は満たされ男性器を受け入れる状態となる。 Ωには二カ月から半年に一度の発情期があり、αを、時にβをも強く誘引する性フェロモンを放ち、身体が性交渉を求める。 その為、望まぬ性交渉や妊娠も多く、社会生活に多くの支障が出やすい。 前述のα以上に稀な性ではあるが、Ωの性リズムは非常に複雑で他者をも巻き込む事から、忌避されがちである。 但し、αはΩの腹から生まれ出でる事が大多数であるのも事実だ。 Ωの男性型は相手を孕ませる事も稀にあるが殆どが産む側にまわる。 華奢で庇護欲を掻き立てる幼い見た目の者や嫋やかな美しさを有する場合が非常に多い。 αに娶られる事が多いが、捨てられる事も多く社会的弱者でもある。 αΩ間には番という婚姻より強い関係がある。 αがΩの項に強く噛み跡を残す事で成立する。 番が成立してしまうとΩは番のα以外のオスを受付けず、Ω性フェロモンも番にしか効力を発揮しなくなる。 Ωは生涯にたった一人の番をつくることが出来るが、αにおいては番のΩは一人に限定されるものではなく、α側から一方的に番関係の解消も行える。 番を解消されたΩは精神的苦痛、発情期の乱発によるΩ特有の病に伏せる事となり、番解消から数年後には儚くなってしまう症例が後を絶たない。 これを番喪失Ω症候群と呼ぶ。 番の契約はΩにとって自身の生命を相手に託すものであり、αにとってもΩの生命を背負うかなり強い責任を伴う行為だ。 その為、覚悟を保って番をつくったαはΩを守る能力が飛躍的に上がり、番を慈しむ事に全力を尽くす事が多いが、それは望んで番契約を行ったαに限定される。 運命の番は出会った瞬間に互いに雷に撃たれたような衝撃と、互いに相手を誘惑する発情期を無視して身体が自発的に発情、もしくは欲情する。 しかし、発情は擬似的にであり、性交渉を行なっても妊娠と結び付く事は無い。 運命の番と出会ってしまうと、その瞬間から相手の事だけを想うようになり、他の番が居るのを忘れる事も有る。 それまで運命と出会ってしまったαと番になっていたΩは、前述の番喪失Ω症候群になってしまうが、それ程運命の番との出会いは抗えないものであるらしい。 らしい、というのは、この『運命の番』の話は大昔から語り継がれているが、運命かどうかは本人達による申告でしか確認する事が出来ないのである。 運命の番が多いのか少ないのかも分かっていないが、確かに居るのだ。

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