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第23話

私達だけの器、日榊の懐妊はとても早かった。 誰の子なのか、私達3人にもまだ分かりはしない。 日榊を想う気持ちはある。 だが近頃は、榊さんを想う気持ちの方が強いと感じるのは気のせいでは無いだろう。 抱けば抱くほど、あの人が愛おしくなる。 私は今後、日榊の発情期に駆け付ける気になるのだろうか。 私の後継などは別にいい、榊さんは私の子を有馬宮家の後継にしたいと言う。 1人、私の子を1人だけ産んで貰ったら、番を辞してしまおうか。 しかし、やはり日榊の事も気になってしまう。 あの、日榊のΩフェロモンは格別に興奮する。 逞しい姿がドロドロに溶けてしまうような痴態が愛おしい。 特別な事が無ければ、会いに行けない事になっているが、数カ月経った今でも発情期の彼との交尾を痴態を忘れられない。 結局、唯1人を大切にしようと思いながらも、もう1人も気になって決められずにいる。 榊さんも日榊も、両方ともを選び取れば良いと言ってはくれているが、誠実さに欠けると感じてしまう。 だが、榊さんは私の子を日榊が産んで後継に起てようと思っている以上、暫くは日榊の番でいる必要はあるのだ。 私はこんなにも優柔不断だっただろうか。 余りにも魅力的な2人と出会ってしまったのだ。 焦がれに焦がれた私を受け容れられる存在。 ベビーアイテムのカタログを見ながら、私は全く別の事を考えている。 お、コレいいな。 日榊と別れるだの何だのと悩んでみても、やはり離れ難い。 子供を産んでくれる存在として、特別視しているのもある。 何度も堂々巡りを続けているが、暫くはこの関係に甘んじていたいのが本音だ。 どっちも抱きたい。 私は席を立ち、会議室へと向かう。 午後からの会議には、撫子も参加だ。 しっかりしてないと、足元見られてしまうぞ。 撫子は同志でありライバルでもあるのだから、ビジネスとプライベートは分けて相手取らないと確実に負ける。 私は思考を切り替えて、本日の議題の内容をもう一度頭に入れた。 やはり撫子は怖いな。 最強の女豹と呼ばれるだけの事はある。それに、彼女は日榊だけを一身に愛して、αとしての自信に満ち満ちている。どっちつかずの若僧の私など、まだまだだ。 私は自分の不甲斐ない姿を周りに見せられない。 自分を律さねば。 撫子の自信に漲る姿に、自分との差を見せつけられてしまっただけの会議だった。 会議室からオフィスに戻る道すがらスマホを見る。 マナーモードを解除し、浮かんだホーム画面にはメッセージアイコンが点いている。 早速開けば、日榊が子供の性別が分かって報告会をするから、本宅に来いというものだ。 撫子にコテンパンにやられて落ち込んでいた気持ちが浮上する。 会議の後の仕事がやたらと捗った。 いそいそと仕事を早めに切り上げ、有馬宮邸に向かう。 車の後部座席から降りて、何となく違和感を感じる。 何だ? 違和感を感じるものの、気にする程の事でもなく、私は有馬宮邸の本宅に入って行く。 榊さんを除く全員が集まっている。 今日は義両親も揃っている。 挨拶をして席に着くと、日榊が見計らったように立ち上がり、子供の性別が発表された。 撫子と久彬のオッサンは日榊に抱きついて喜んでいる。 私は何となく遠い気持ちで、その様子を見ていた。 久しぶりに日榊と会ったというのに、私はどうしたというのだろうか。 皆で夕食を囲み、暫くして私はお暇させてもらった。 榊さんの元へ帰るのだ。 早く子供の性別を榊さんに報告したいからだ。 私は何となく、自分にそう言い聞かせた。 凄くα感が減っている徳川エリック25歳。

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