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第22話
俺は現在、徳川さんか撫子さんか久彬さんの子を妊娠している。
これまで出会ってきたαでは、てんで駄目だったにもかかわらずだ。
俺は漸く、母親になれる。
胎の子が誰の子であっても嬉しい。
撫子さんも久彬さんも既に親バカになりかけており、ベビーアイテムをこれでもかと言う程買って来る。
そして島津家やウィンチェスター家、徳川家、そして有馬宮家の体裁の為にも、出産後に挙式を執り行い、その足での新婚旅行へは、ウィンチェスター家のプライベートフライヤーで英国の湖水地方の徳川家の別荘へと行く事も決まっている。
費用は式も旅行も島津家持ちだ。
誰にも言ってはいないが、有馬宮家の後継ぎは徳川さんの子に、と思っている。
榊兄さんもその方が喜んでくれると思うから。
榊兄さんは徳川さんを愛しているし、兄さんに子は産めない。
きっと徳川さんの子を立派に後継ぎとして、教育してくれると思う。
徳川さんのαの子供を最低でも2人は産む必要がある。
徳川家の後継ぎとウィンチェスター家の後継ぎ、島津家の後継ぎ、有馬宮家の後継ぎ。
最短で4人だ。
俺はΩではあるけど、体力はα並みにあるつもりだ。
うん、いける筈だ。
子供が揃うまで何人だって産むぞ。
俺を選んでくれた夫達の為にも、胎を休める気は無い。
それに早く久彬さんの子供を産みたい。
あの人は数年もすれば、前期高齢者だ。
子供の成長を見られる時間が少ない。
胎に居るこの子が、久彬さんの子供だといいな。
可能な限り、長く我が子の成長を見ていたいだろうと思う。
胎を撫で、我が子に早く出て来いと話しかけていると、榊兄さんが我が家に帰って来た。
温かいコーヒーを出して話を聞く。
Ωのフェロモンに青い顔をしているが、兄も真剣なのだろう。
徳川さんの子供を多く産むように頼んで来た。
俺は元々その予定だと、頷く。
但し、授かりものだから保証はできないとも返事をしたところで、Ωの居る空間に限界を迎えた兄は帰って行った。
こんなに長く榊兄さんと話したのは、初めてだったかもしれない。
榊兄さんは本当に徳川さんの事を愛しているのだろう。
榊兄さんから香る徳川さんのフェロモンが、物凄く強くなっていた。
徳川さんの執着具合が窺えるというものだ。
榊兄さんが幸せになれるのならば、徳川さんとの発情期婚も悪くない。
徳川さんとの子供が後継ぎとして揃えば、番解消しても良いと思っている。
俺が兄を大切に出来ない分、兄を大切にして欲しいからだ。
俺を愛してくれるαは他にも居てくれている。
だから、榊兄さんだけを愛してくれる人が居ても良い筈だ。
徳川さんの気持ちも、榊兄さんだけに向いて欲しい。
徳川さんの子供は、ちゃんと産むから。
肝っ玉母ちゃん、爆誕の予感。有馬宮日榊28歳。
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