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第7話
目が覚めたのは、翌日の朝7時過ぎだった。
大きな欠伸をしながら、重々しくまぶたを上げた。まなじりに溢れた涙を指の背で拭い、瞑目して1回、深呼吸をする。
一瞬、ここがどこか分からなかったが、あぁそうだ、二丁目のラブホだったと思い出す。再びまぶたを上げ、腕の中ですやすやと眠り続ける馨に視線を垂らした。
そうそう。それで昨晩、媚薬を盛られた馨と燃えに燃えて、ここで一夜を明かしたのだ。シャワーを浴びずに寝落ちてしまったため、ふたりして身体は体液でかぴかぴに汚れていて、汗やザーメンの濃い臭いが漂っていた。
馨に至っては昨日、訳が分からないまでに泣いて善がっていたせいで、閉ざされたまぶたは腫れている上、目尻は真っ赤に染まっていた。メイクがほとんど取れ男の顔に戻っている。いつもより少し、寝顔が幼く見えた。
色気をふんだんに放ち、はしたなく乱れていた名残を感じさせながらも、無防備で可愛い。口角がおのずと引き上がる。結婚指輪が光る左手で額にかかった前髪を横に流せば、馨は目元をひくりと微動させ、口をもごもごと蠢かせた。
昨夜あれだけめちゃくちゃに抱き合って、精嚢は空っぽになっているはずなのに、元より朝勃ちしていた性器がいっそう硬くなったのを感じた。腰のあたりがむずむずとし、カラカラに渇いた喉をねっとりとした唾が通っていく。
「ん……」
微睡んでいる馨にそっと唇を重ね、おもむろに伸ばした舌を薄く開いた口の中に入れる。舌同士がぬるりと絡むも、馨の舌はのろまだった。が、程なくして目が見開かれる。それから眉間に皺が寄り、顔を離される。
「……へ? あれ? ここどこ?」
馨の声はひどく枯れていた。眠気を孕んだ瞳があちこちへと揺らめき、眉が面白いほどにうねる。
「 ……って、か、身体……身体に力が入んない……?」
「覚えてねーの?」
問うた俺に、馨は顰めた目顔を向けてきた。いったい、何がどうなっているんだと言いたげな眼差しから、昨夜の出来事をいっさい記憶していないことが分かる。それほど、媚薬の効き目が強かったのだろう。我を忘れて、俺を渇望していたのだ。
「……え、えっ? ちょ……っ、ん……ンンッ!」
「だったら、お前のためにおさらいしてやるよ」
「え、ぁ……なに……あっ……まっ、待っ……!」
混乱する馨に覆い被さり、素肌をまさぐる。昨夜に酷使した馨の身体は思うように動かず、俺にされるがままになっていく。戸惑いと怯え、それから湿り気のある熱を露わにする表情にさらに興奮しながら、俺は愛してやまない奥さんをまた、たっぷりと愛し始めた。
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