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第二章 寂しさ5

暫くの沈黙が続いた後、俺は、俺に被さったままの桜くんの背中に手を回した。 「心配かける様な事してごめん…。でも違うんだ。あの子はそんな子じゃない。それに、そろそろ前を向いても良いんじゃないかって桜くん言ってくれたよね。俺、その子に会って漸く前向いて歩けそうなんだ。」 そう言った俺の言葉は、静かな空気に飲み込まれたみたいに、消えて無くなった。こんなに近くにいるのに聞こえてないんじゃないかと思うくらいに、しんと静まり返ったのだ。 なかなか反応を示さない桜くんに不安になる。確かに、出会ってその日にセックスして付き合って…、桜くんは怒ると思っていた。だけど、怒りながらも俺の背中を押してくれると思っていたのに。喜んでくれると思っていたのに…。 「彼氏の事ちゃんと好きなのか?」 また暫くして次に沈黙を破ったのは桜くんだった。 「うん、好きだよ…。」 そう聞かれて俺は即答した。即答出来るくらいに俺は、会ったばかりの優士を好きになっていた。こればっかりは言葉で説明が出来ない。けれど、感覚がこれは恋だと言っているのだ。 「そうか…。わかった。今日はもう帰ってくれ。頭冷やしたい。…殴って悪かった。」 目を合わせず、桜くんは俺を店の外へと引っ張って行く。 「桜くんっ」 振り向いたところで目の前で、ピシャリと閉められた扉。家族のようになんでも受け止めてくれた桜くんに、初めて拒絶されたみたいで。心がすごく痛くなって、気付けば俺は優士の家へと足を向けていたのだった。

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