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この野郎!
抵抗しないからってベタベタ触りやがって!
気持ち悪いんだよ!!
「は……はぁはぁ……」
み……耳元でハァハァ言うな!!
気色悪い!!
「ねぇ。次で一緒に降りない?」
耳元で囁かれて悪寒が走る。
何、勘違いしてんだ!
降りるわけねーだろ!!
恥ずかしいとか言ってる場合じゃない!
ガッ!!その時だった。
不意に手が離れる。
「こんな事して恥ずかしくないんですか?」
俺を触ってた奴は50代のサラリーマン。
その手を掴んだのは篠だった。
「な、なっ!手を離せ!
言いがかりはやめろっ!!
変な事言ってると、訴えてやるぞ!!」
逆ギレしたサラリーマンが声を荒げる。
「…………次で降りてください。
駅員室で白黒つけましょう。」
丁寧な言葉と落ち着いた声。
サラリーマンを一瞥し、篠は降り口を目指す。
「俺はこれから大事な取引があるんだ!
茶番に付き合ってられるか!」
篠の力が強いらしく振り解けず、サラリーマンは徐々に青い顔になってる。
「数分で済みますよ。」
篠は次の駅で痴漢を無理矢理引きずり下ろし、駅員室に連れて行った。
結局、ソイツは痴漢の常習犯である事が分かり余罪が多そうな為、警察に引き払われた。
男の痴漢なんて無視する事も出来たのに……
「…………あの。ありがとう。ごめん。」
恥ずかしかったけど、礼は伝えた。
「大変だったね。
それより急ごう!遅刻する。」
「あ……本当だ。
電車じゃ間に合わないかも……
タク代だすよ。会社直行で大丈夫?」
「うん。」
同期だけど華やかで俺とは違う人種。
ジックリ話すのはそれが初めてだった。
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