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営業のエースである 篠は同期で同い年。会社No.1のモテる男だ。
いつも違う女の子と一緒にいるけど、男にやっかまれてるかと言ったら、実はそうでもない。
仕事は真面目、凄く努力家。
仲の良い先輩も多いし良い奴だから、篠の周りには人が多い。
女子社員からは……
『イケメンで優しい。』
『スマートでクール。』
『出来る男。』
『見つめられたら、一瞬で落ちる。』
『口説かれたら誰も断われない。』
『浮気はしないけど、一人と続かない。』
『モテすぎて不安になる。』
なんて噂をしょっちゅう聞く。
まぁ、別に俺には関係ないけど……
なんて思ってたのが数日前。
「おはよう。水谷。今日も寒いな。」
キラキラの笑顔で声をかけてくるのは篠。
電車の痴漢事件以来、いつも同じ電車……
『電車、2本早くしたら?かなり空いてるよ。』そう言われて変えてみたら全く痴漢されなくなった。
そして心配してくれてるのか気を遣ってくれているのか、同じ車両に乗ってくる。
一緒に会社に行くのが日常化。
「水谷。昼飯?一緒にどう?」
「何してんの?資料、運ぶなら手伝おうか?」
篠は会社でも何故か用もないのに頻繁に俺の所に来る。
「たまには飲みに行こうよ。今夜は?」
「忙しい。」
意味ありげに見つめられたり、誘われる事もあった。
「下の名前、ヒナトっていうんだ。
ヒナちゃんって呼んじゃおーかな。」
「やめろ。」
なんか……変だよな……
俺、昔から変なのに好かれるけど。
「ヒナちゃんって、髪、綺麗だね。」
「…………」
髪を撫でられ、手を払う。
男が男の髪を撫でるって、どんな事態だよ!
えーと。
俺、口説かれてる?
いや。まさかな。アイツ、女にモテるし……
いくらなんでも……そんな訳……
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