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第1話 独占欲 1

 僕にはそれはそれはもう可愛くて仕方がない恋人がいる。小さくてキラキラでちょっと素直ではない二個上の彼氏。普段は無口で、視力が弱いので眉間にしわが出来て目つきが悪い。それゆえに周りからは怖がられることが多い。しかしいざベッドの中となると、胸がキュンキュンするほどに可愛くて仕方がない。  あまり陽に焼けない白い肌はシミ一つなく綺麗で、その肌はキメが細かく触り心地がいい。白い肌が朱色に染まるのを見るたびに、僕の胸の高鳴りは止まなくなる。 「……臣、和臣」  そうそう、情事の最中に小さく僕の名前を呼ぶ声が甘やかで、堪らない。 「鷹くん」  名前を耳元で囁き、くすぐるように指を身体に這わせれば小さく肩を震わせる。微かに潤んだ瞳で僕を見上げるその視線に、何度となく僕は理性を吹き飛ばした。 「和臣っ、起きろっ」 「いっ、痛っ」  突然背中に感じた痛みに身体が跳ね上がった。驚きのまま辺りを見回せば、先程まで目の前にあった鷹くんの艶めかしい姿態はなく、自宅のこたつでうたた寝していたのだと気づく。そして痛みを感じる背中をさすりながら背後を振り返ると、そこには僕をじっと見下ろしている人がいた。  僕はそんな彼を見上げ目を瞬かせた。普段はセットしてツンツンに立てている金色の髪が今日は自然に下りていて、いつもよりほんの少し幼い印象を与える。でも長めな前髪の下にある薄い眉は不機嫌そうにひそめられていた。 「あ、鷹くんいらっしゃい」 「いらっしゃいじゃねぇよっ、なんだこの汚部屋」  僕の声にますます顔をしかめた鷹くんは、部屋の中を指差し苛々したように小刻みに足を踏み鳴らす。そんな剣幕に僕はのんびりと室内を見回した。  少し広めの八畳にはベッドと本棚とテレビ、そして僕がいまいるこたつのみで必要最低限だ。

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