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第2話 独占欲 2

 ただし、部屋の隅には未洗濯な衣類が積み上がり、ゴミ箱から溢れそうな、いやだいぶ溢れて床に散らかっている紙ゴミや、適当にビニール袋に詰められたゴミ袋。読みかけの漫画本や参考書などが転がっている。 「お前、半月でこの有様とかありえねぇ」 「鷹くん、それは僕のことを半月も放っておいたことだってわかってる?」  不貞腐れて口を尖らせた僕など見向きもせずに、鷹くんは上着やマフラーを壁掛けのハンガーに掛けると、山のような洗濯物を取り上げて部屋を出ていく。僕の住んでいるこの家は八畳一間に三畳ほどのキッチン、バストイレ別の物件。洗濯機は脱衣所にあるのでそこへ向かったのだろう。しばらくすると微かに洗濯機が回る機械音がした。そしてその次はキッチンで水音が響き、食器の触れ合う音が聞こえてくる。シンクに溜まりに溜まったものを洗っているのだろう。 「マジ有り得ねぇ」  ブツブツと繰り返される呟きと共に乱雑な足音が部屋に戻ってくると、その足音の主はゴミ袋を片手に部屋中のゴミを拾い集め出す。そんな様子を僕はテーブルに顎を乗せたまま黙って見つめていた。そして四、五十分も経てば、床を覆っていたあらゆるものがなくなり、見事に広々とした空間に変わる。窓を全開にして掃除機をかけ、フローリングも磨かれ、澱んだ空気さえも一掃された。 「さすが鷹くん」  小さく拍手する僕を横目に、陽が傾きほんの少し薄暗くなった部屋に電気を灯すと、鷹くんは勢いよくカーテンを引く。そしてようやく彼は大きく息をついた。 「ったく、お前みたいな生活力のない奴に一人暮らしさせるとか、おじさんとおばさんの気が知れねぇ。マジ実家に帰れ」  いまだ眉間にしわを刻みながら、独り言のような小さな声で文句を呟き、鷹くんは僕の向かい側に座るとこたつに入り込んでくる。 「は? なにそれ。僕は鷹くんとおんなじ高校行きたくて、頑張ってこっち出てきたんだよ」  部屋を掃除してくれたことには感謝するけれど、いまものすごくカチンときた。

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