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第7話 独占欲 7

 ため息混じりにそんな様子を横目で見ながら、僕は床に放って置かれた飲み物が入った袋を両手に持ち、キッチンへ足を向けた。 「なにこの展開」  まだひんやりとしている缶チューハイやビールを冷蔵庫に収めながら、思わず言葉がついて出る。次第に冷静さも戻ってくるが、それ以上にふつふつと込み上がるものを感じた。 「鷹くん、ちょっと」  キッチンから少し大きな声で彼を呼べば、扉の向こうから鷹くんは小さく顔を出す。僕の様子を窺うような視線に僕は至極優しく笑いかけ、手招いた。 「扉は閉めて、こっち来て」 「あ、あぁ」  戸惑いながらも僕の言葉に従い扉を閉めると、鷹くんはゆっくりと近づいてくる。けれどそれが焦れったくて、僕は腕を伸ばして彼の手首を掴んだ。そしてそれを勢いよく引き寄せる。けれど僕は抱きしめることはせずに、近づいた身体を今度は引き離すように壁へ押し付けた。 「あのさ、鷹くん」  顔の横に両手を付いて瞳を覗き込むようにして見つめると、驚きに目を見開いた彼の肩が反射的に大きく跳ね上がる。身体を強ばらせる鷹くんの耳元に唇を寄せれば「ごめん」と小さな声が聞こえた。 「謝るってことはわかってるんだよね? ホント鷹くんはさぁ、俺のこと怒らせるの得意だよね。家の住所まで教えちゃうとかって有り得ないから」 「和臣、あの」  トーンの下がった僕の声に鷹くんは焦ったように言葉を紡ごうとするが、それをいまの僕が受け入れてあげるわけがない。 「鷹くん、今夜覚えておいてね。もしあの人達が酔いつぶれて、寝こけてうちにそのまま泊まるようなことになっても、遠慮なくヤるから。泣いても駄目だよ」  血の気が引いて青褪めた目の前の顔に優しく口付ける。そして小さく首を傾げ満面の笑みを浮かべてあげると、鷹くんはズルズルとその場にしゃがみ込んだ。  そんな彼が大騒ぎをして盛り上がっている連中を、日付が変わる前に大慌てで追い出したのは言うまでもない。 独占欲/end

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