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第6話 独占欲 6

「和臣、誰か来た」  けれどもいまこの状況下で、はい、そうですかと止める気にはならない。しかし鷹くんの声を無視しながら手を動かしていると、落ち着きなく彼は逃げ出そうとし始めた。そしてなんの嫌がらせかと思うほどに、連続してチャイムが鳴らされ続ける。小さく舌打ちをして扉の向こうにある玄関を睨むが、終いにはドアを叩かれた。 「あっ」  苛々とする音の二重奏に拳を握り締めた瞬間、急に鷹くんはなにかを思い出したかのように声を上げた。その声に僕は嫌な予感がして、冷ややかな視線で彼を見下ろしてしまった。 「鷹くん?」 「わ、わりぃ。あいつらに今日ここに居ること言ってた」  いまだに続く二重奏は止むことを知らない。僕がゆっくりと身体を持ち上げれば、鷹くんは慌てて床を這い立ち上がって乱れた髪や服を直した。そして飛び出すように部屋を出て玄関扉を開けた。覚えがある賑やかな声が室内に聞こえてきて、思わず拳で床を殴ってしまった。 「よお、臣くん明けおめ」 「相変わらずのイケメンだな」 「新年会やるっつったら鷹志がお前んとこ行くって言うから、来ちゃったわ。つうか、広いなお前んち」  遠慮もなくずかずかと、人のうちに上がり込んできた野郎どもに引きつった笑いを返しながら、ちらりと鷹くんに視線を向ければ思いっきり不自然にそらされた。そしてゆらりと立ち上がった僕の気配を察したのか、ほんの少し後ずさりする。 「たんまり飲み物と食いもん買ってきたから」  彼ら三人の手を塞いでいたビニール袋が床にどさりと置かれる。 「余ったの冷蔵庫入れといて」  彼らは袋の中から好き勝手に取り出した飲み物と食べ物をテーブルの上に広げると、そそくさとこたつに入りそこら辺に上着などを放った。そして几帳面な鷹くんがそれらを丁寧にハンガーへ掛けていく。

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