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第7話
高良 梓。10月31日生まれの28歳、独身。都心から少し離れたボロいアパートに住んでいる。会社までの通勤時間は電車を使って約30分。 恋人なし、今までの恋愛経験はゼロ。仲の良い友達も特になし。好きな色は黒、趣味は読書。 最近はキューブのチーズにハマっておりよく食べている。 体を洗うのはまず左腕から、お尻にはきっと本人も知らないであろうホクロが2つある。 これを知っているのはたぶん、俺くらいだ。
梓さんの事は全部知っている。あの日、すれ違った瞬間運命だと思った。誰もが目を引く可愛らしい顔つきの男性。童顔で色白で、天使が舞い降りたのかと思った。
俺は一目見た時から好きになった。彼を俺のモノにしたいと思った。
使える人脈を駆使して、彼が俺の元へ堕ちてくるように誘導した。俺だけのモノになって、俺がいないと生きていけないようにしないと。
精神的にも肉体的にも弱った梓さんに助けようと手を伸ばす人はいない。 だから、俺が助けてあげる。もう俺以外を見ちゃダメだよ。
こういうの、吊り橋効果って言うんだっけ。梓さんと結ばれるのなら、何だっていい。
そして、今……。やっと手に入った。
「梓さん、好きです。愛してます」
「は、恥ずかしいな……。俺も、好き、だよ」
恥じらいながら「好き」なんて言われたら、俺はそれだけで幸せで、死んでもいいとすら思える。
クマが酷かった目も、今ではスッキリとしている。不眠症にしてしまったのは本当に申し訳ないと思うが、今はたっぷりと睡眠時間があるから、それで勘弁して欲しい。
毎日書いていた手紙も、今では書かなくなってしまったので、その分言葉で伝えようと思う。手紙を書いていると興奮してしまって、手紙に射精してしまったのは仕方のないこと。梓さんの手に俺の精液が付着したのだと想像すると、とても興奮する。
だけど、どうしても不安だった。俺の梓さんを誰かに取られないか、不安で不安で仕方がなかった。 だから、帰り道は誰かに襲われないように遠くから守ってあげていた。部屋には盗聴器、小型の隠しカメラを設置して、24時間監視した。盗み見る梓さんも可愛かった。
もう、コソコソする必要はなくなった。
俺の元に堕ちてきたのだ。天使の羽が生えた、純白の天使が……地獄の悪魔の元へと。
「梓さん……」
「……日向、いいよ……。好きにして。俺を、日向のモノにして……?」
あぁ可愛い、愛しの天使。 悪い悪魔の罠に引っかかって、もう、逃げられないね。
一緒に堕ちる所まで堕ちよう。
白い羽を、黒く染めてあげる。
「愛してるよ、梓。ずっと、ずーっと一緒にいよう」
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