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第3話
「神の啓示が下った。『今宵はファロスと過ごすように』との仰せが私の頭に純銀の鈴のように響き渡った。これは私にとっても滅多にないことゆえ訝しんでいたが、そなたを見そしてその力強い言の葉を聞いて何だか得心した。
さ、こちらへ」
聖神官の証しである紫の薄い絹の衣を優雅に翻して、細く長い指がファルスを部屋の奥へと誘った。
その素肌に纏った薄い絹の衣はしなやかな肢体にひたりと張り付いて柳のような細い腰や形の良い白桃を思わせる双丘の形をくっきりと浮かび上がらせていた。
古えの英雄が好んだという紫の戦支度にちなんだんだ聖なる紫色はこの国では神官しか身に纏うことは許されていない。そして華奢な肢体も――古の歴史書によれば、神として祀られる前の人の身であった頃、強力自慢の兵士達をもたじろがせるほどの敏捷さと的確さで剣を振るい、矢を放ち、そして兵士の士気を鼓舞させる力強い躍動感に満ちていたと記されている――聖神官の長たるに相応しい。
神の現し身としての振る舞いに相応しい典雅で、そして戦がどんな逆境であっても怯まなかった証しの若木のようなしなやかさに満ちていた。
ファロスはその後ろ姿に魅入られながら二歩ほど後を歩んだ。我知らず息を殺して。
国王陛下から参謀に任じられる程の知力や臨機応変に対応する頭脳は持ち合わせてはいたものの、聖神官の長キリヤの、整い過ぎて天上の神に似た容姿を目の当たりにした瞬間から脳が麻痺したかのようだった。
薄紫の絹の褥に雅やかな動作で身を横たえた聖神官は細い腕を伸ばしてファロスの手首を掴んだ。
「存じているとは思うが、禊とは戦神のご加護を受ける神聖な儀式でもあるが、別の側面もある。神の恩寵を受けるに相応しいかどうかを私の身を以ってご判断なさる。
そのことを頭の中にしかと刻んで、軽々しい振る舞いは厳に慎むが良い」
この国やその周辺国では、女性だけではなく若い男性も春を売る生業で世を渡っている人間も多い。そして、女性は生殖に結びつくので、正式な婚姻を結んだ人間同士が子孫繁栄のためだけに行うのが美徳とされていて、娼婦よりは男娼の方がどちらかと言えば好まれる。
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