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1DAY
僕は訳あって、街の広場にある檻に入ってる。
別に、悪い事をして捕まっているわけじゃない。
この檻は、職を求める人が入り、雇い主から声が掛かるのを待つ場所。
僕は15歳になったら家を出なくてはならず、お金も住む場所も自分で何とかしないといけない。
学校には行ってたのである程度の学はあるけど、仕事を選べるような立場ではないから。
こうして檻に入って、誰かが雇ってくれるのを待ってる。
あまり身体は大きくないけど、肉体労働でも何でも、貰える仕事はやるつもり。
今朝から何も食べていないし、できれば寝床と食事付で働かせてもらえたら嬉しい。
そしたら給金は少なくても構わない。
食べていけたらそれで充分。
何人もの雇い主が檻の前へ来たけど、僕には未だ声が掛からない。
困ったな、今夜は野宿するしかないかもしれない。
明日は隣街の鉱山行って、雇って貰えるよう頼んでみよう。
「こんにちは」
「ふぇっ?こ、こんにちは・・・」
急に声をかけられた。
長い金髪の紳士。
とても綺麗な人だ。
あれ、でも・・・。
「暫く私の目の代わりになってくれる人を探しているんだけれど、君を30日程雇う事は可能かな?」
目の代わり・・・この人は目が見えないんだ。
だから脚が悪い訳でもないのに、杖をついてるんだ。
だから僕なんかに、こんなに優しく声をかけてくれるんだ・・・。
「は、はい!僕で良ければ、出来る事は何でもお手伝いいたします!」
「ありがとう。では早速お願いするよ。杖なんて使った事がないから勝手が分からなくて。ここへ来るまでに何度も人や物にぶつかったんだ」
僕は自ら檻を出て、雇い主の傍へ駆け寄った。
ええと、どうしたらいいかな・・・。
「私はアウレウス。君の名前は?」
「あ、僕は・・・シアン、です」
見えなくても、この名前から僕がどんな姿か、判ってしまうかもしれない。
そしたら、雇って貰えないかも・・・。
「シアン、よろしくね」
「ぁっ、よ、よろしくお願いします!」
初めての雇い主様は優しく笑って、僕に手を差し伸べた。
その手を取る事を一瞬躊躇 ったけど、心の中で謝りながら、手を握り返す。
これから30日間、この人のために一生懸命頑張ろう。
そう心に誓って。
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