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大きい子ども

「ねー坊ちゃーん。無視しないでよー」 構ってほしいのか知らんが時折赤松はこういった行動を見せる。でかい図体して中身はガキかよ……どこぞの某少年探偵を思いだした。 それかただ単純に、俺をからかおうとしてるか。 真意を探ろうとしたが、へらついた表情と色眼鏡に隠されて良く分からない。読めない男だ。腹の中で何を燻らせてるのかも不明。どうせ大したことは考えてないんだろ。明日の晩飯何とかそんぐらいのレベルのことだろ。頭の中まで小学生か。 「うるせー。只今勉強なうだよ、見てわからない?邪魔すんな」 「ちょっとだけでいいからーこっち向いてくださいよー」 断る。言い放ったら不満げなブーイングを向けられた。 遊んでやる暇はないし、やる義務も俺にはない。つか勉強させろし。 少しかまってやると調子に乗るのでここは愛を持ってガン無視をしてやる。躾は時に放置することも必要になるんだよ。 「坊ちゃーん坊ちゃん坊ちゃん坊ちゃん坊ちゃん坊ちゃーん。ねー坊ちゃんってばー」 ああうるせえ!無視だ無視。放置してたら飽きてどこか行くだろう。 「ふうっ」 数式を流し見ていた俺の首筋を生暖かい吐息が撫でていく。 「ひょおおえええ!?」 意味不明な叫びが喉の奥から迸った。首ダメなんだよ俺!え!鳥肌やば! まだ変な感覚が残っている首元を手で守りながら、俺はギロリと背後を睨みつけた。 悪戯が成功した子供のように無邪気な笑顔でピースしている赤松のグラサンにピースをかましてやりたくなった。

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