75 / 129

第75話

「急いでお父さんが大変なんだ…」 「えっ!お父さんが!?」 その言葉にすぐ反応する。 「早く、こっちへ病院へ送ってあげるから…」 そう急かす男… 「う、うん…」 お父さんに何かあった!? そのことで頭がいっぱいで、見知らぬ人物を怪しむことすら忘れて、言われるまま車に乗り込む由里。 「お父さんがどうしたの!?」 「……お父さん?心配?」 「自分の心配したほうがいいかもな…」 「…え、っ」 グイッと由里の座っている助手席の背を倒して、後部座席へ由里を引きずり込む男。 「こんなに簡単に騙されるなんて、拍子抜け、そうとう『お父さん』が大事なんだな…」 由里を抱き込み行動を制限しながら笑う。 「なっえ…騙す…?嘘?お父さんは?」

ともだちにシェアしよう!