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第11話

初めて正式に迎え入れられた高杉の部屋で暁は有頂天だ。 「よかった、やっぱり諦めなくて」 高杉に突進し、抱きついた。 そして早速もぞもぞと衣服をまさぐる暁の頭を、鈍い衝撃が襲った。 息を荒げた高杉の手には大きな目覚し時計。 思いきり目から星が出たが、ふらふらと立ちあがって暁はなおも尋ねる。 「でも伊織さん…好きな人とならしたくなるでしょ?静流とは…いででっ」  げしげしと何度も蹴りつけられ、流石に弱気になる暁。 「伊織さん…やっぱり俺じゃ、静流の替わりにはなれませんか」 「当たり前だ」  鋭い即答に、ますます心が萎んでいく暁であったが、高杉は腕組をしたまま続けた。 「誰の替わりでもない。お前はお前だろ」  意外な発言に暁は目を丸くし、心のボルテージは一気に最高潮に達した。 「伊織さんっ!」  周りを気にせぬ後方からのタックルに、高杉は突き飛ばされて勢い良く壁に頭をぶつけ、ゴツッという硬い音が部屋に響いた。 「いっ伊織さん、大丈夫ですかっ」  殴られる?蹴られる?はたまたもっと酷いことを…? 暁は高杉の心配と同じぐらい自分の身の危険を感じた。 かなりのダメージを思わせる高杉のスローな起き上がり方に、ますます恐怖が募る。 「お前…」 「はいっ、ごめんなさいっ」  高杉は何故だか振り返らない。 暁は恐くて近寄れず、ただただひれ伏すのみ。 「お前、名前なんていうんだ?」  シチュエーションにそぐわぬ問いに戸惑いながら、そして今まで名前を知ってもらってなかったことに愕然としながらも、暁は自分の名を告げる。高杉は依然こちらを向かず、暫くの沈黙が続いた。  酷く長く感じた、ほんの数秒。 今からどんな目に遭わされるのか、 高杉は何を考えているのか、 これから二人はどうなるのか、 いろんなことが走馬灯のように頭を回っていた。  そして。 全ての問いへの答えを、その時暁は聞いた。 「暁、好きだよ」 【おわり】

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