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虚風 2

暫くの無言。切ればいいのに、どうしても固まったまま動けない。 そんな中沈黙を打ち破ったのは、 『かーーずーーーくん?』 「ぁ、う、ちだ、さん…っ。」 思った通りの相手で、言葉をうまく発する事が出来ない。 「ど……し、て…。」 どうして、 どうして僕の番号が分かった…? 『和、声が震えてる、何かあった?』 わざとらしく聞くその声。顔を見なくとも十分に恐ろしい顔をしていることが分かる。 「…ぁ………さ…ぃ」 『何?聞こえない。』 「ご、めんなさ、い…。」 『クッ、フハハハハハッ!アハハハハッ!』 「ひっ…ぁ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ…!」 『いくら和でも、今さら謝られたって許せないなぁ。』 するりと手から携帯が抜け落ちていった。本当に殺される、そう確信した。逃げよう、そう思った瞬間カチャっと玄関の鍵が開けられる音がする。 浩だ…! 玄関に座り込んでいたままの僕は必死に立ち上がり、浩に飛びつこうとした。 「こう!……っ!?」 良かった、助かった。そう思ったのに。ドアを開けて現れた人物に僕の求める人とは違って…。 「みーつけた。」 「こ、こないでっ…。」 腰を抜かし、手だけで後ずさりしようとするが力が入らない。抵抗も虚しく、内田さんは僕に跨るようにしゃがみ込んだ。 「急に身売りやめたと思ったら、こんなところで男と遊んでたんだ?ずーっと見張ってたんだ、気づかなかった?」 そういいながら内田さんは楽しそうに携帯の画面を見せてくる。 「……っ!」 画面には僕と浩が部屋の前でキスしている写真。 「俺がいるのに、和はいけない子だなぁ…。」 僕の唇を指でなぞる。その感覚にぞわりと体が強張る。すると途端に抱きしめられた。 「和、震えてる、可哀想に。でも仕方ないね、悪いのは和だよ?悪い子には躾しないとね?」 一気に腕を引っ張られ、強引に浩の部屋から引きずり出される。あっという間に僕の部屋に連れ戻された時には、ベッドに乱暴に投げられていた。 「いっ…!」 逃げようとするも束の間、内田さんは僕の上に乗っかり、準備してきていたのか、縄で僕の両手首をきつく縛り上げベッドヘッドに繋いだ。 「やっ…、やだっ…!」 ジタバタと暴れるが、圧倒的な力には敵わない。 「言う事を聞け!でないと殺すぞ!」 「……ぁ…ぁっ、」 首筋にぴたりとつけられたナイフの冷たさに動きが止まる。それを見た内田さんは満足げに口角を上げた。 「…いい子だね、じゃあ、ご褒美あげる。」 「やめっ…んっ!」 いとも簡単に口内が犯されていく。極限まで舌を後退させるが、絡み付いてきて逃れることができない。うまく空気が吸えなくなりぼんやりとしてきた頃を見計らい、ナイフは僕のTシャツの上を滑った。 肌が冷気に晒される。そして、途端に体をまさぐられるが、その動きはすぐにとまる。 「ねぇ、これは何?」 白い肌の上に付けられた、赤い痕。そろりと痕をナイフで撫でられる。 「……っぁ、」 「なんで…和は俺のものなのに…。」 内田さんはまじまじと痕を見つめた後、僕に視線をあわせた。 「このナイフで、俺のものって印、つけようか。」 にっこりと笑う顔には狂気を感じた。そして子供のようにはしゃいで言葉を続ける。 「うーん、あっ、''内田和''ってのはどう?痛いかもしれないけど、我慢してね?」 その言葉に息を飲む。まだ自由な足をバタつかせ、必死に僕は抵抗した。 「っ!や、やだっ!ごめんなさいっ、もうヤメテ…」 「騒ぐな!」 内田さんはそう叫ぶと、僕をうつ伏せにひっくり返し押さえつけて、躊躇なくナイフを僕の腰に振り下ろした。 「ぁぁぁぁぁぁぁああ''っ!!」

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