33 / 100

向風 3 浩side

ガチャリ 「はい、開きましたよ。」 「どうも、わざわざすみませんね、大家さん。」 早速、俺と陸は和に関する手掛かりはないかと和の部屋にきた。大家を呼んだのはいいが、仲がいいだけでは当然のことながら鍵を開けてくれず、俺がゲイである事をカミングアウトする羽目になった。しかも陸の口から。おかげで大家は変な目でこちらを見ながら帰っていった。 ああ、和が帰ってきたら引っ越すか…。和は周りの目気にするからなぁ。 「浩くん、ガン飛ばしてないで、入るよ。」 久しぶりに入った和の部屋は相変わらずシンプルで、玄関では真っ先に、空に浮かぶ飛行機の絵が出迎えてくれた。 「爽やかな絵だね、高校生の男の子がこんな絵飾るって珍しいね。」 陸が俺の視線の先に気付いて言う。 「すごく大事な絵だって言ってた。」 「へぇ。」 関心無さそうに、しかし、くいっと口角を上げて陸は笑う。 「だったら、置いて行かないよね〜、結婚するってことはそっちに住むわけだし。」 そう言われ、この絵の話をしてくれた時を思い出す。和は本当に大切そうに、そして安心したようにこの絵を見ていた。精神的に不安定な時もこの絵をみれば、少し落ち着くとも話していた。 だったら…、 「あ…。」 「何、」 「靴が…。」 俺はあることに気づき、靴棚を開ける やっぱり…。 「和の使ってる靴が、全部あるんだ。物欲のないやつだし、この間お揃いで靴買ったばっかりだから、新しく買ったってのは考えにくいな…。」 陸はガリガリと首を掻く。 「これは、黒かもしれないね。」 俺たちは目を合わせた。 「とりあえず、俺の方で色々調べておくよ。ボスには事情は話してあるけど、もう決まってる仕事は片付けてもらうよ。それまでは和くんの件は俺に任せといて。分かってると思うけどミスは許されない、だからちゃんと体も頭も休めるように、いい?」 「ああ、公私混同はしない。」 ふ、と笑って陸は煙草に火をつけた。 「ほいじゃ、もう浩くんは大人しく寝なさい。」 「うっせ、どこのババアだよ。」 「それを言うならジジイで。」 じゃあね、と言う背中に言葉を投げかける。 「陸、ありがとな。」 勿論、お返しはちゃっかりいただきますので。 そう聞こえた気がしたが無視して俺は戸を閉めた。

ともだちにシェアしよう!