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新場 2 開生side

「入っていいよ、開生。」 陸斗さんに呼ばれ顔を上げる。俺は珍しく緊張していた。廊下で待っているその微妙な間は更に俺を緊張させて。 柄でもねぇ…。 ぐっとバクバクうるさい心臓を抑えた。 「あははっ、緊張しなくていいよ、ボスだって人間なんだから。」 いつもの調子の陸斗さんの声で安心する…わけがない。何だって俺は今、闇の世界に歩みを進めているのだから。 キィっと扉が開いたその先は、思っていたよりも明るい。少し段差の上がっているところに、和服を着た男が2人いた。恐らく座っている方がボスなのだろう。 陸斗さんが膝をつき、手を合わせる。言われていた通り、俺も同じ姿勢をとった。 「はじめまして、ボス。杉元開生と申します。」 凛と響いた自分の声に身が引き締まった。 「君が開生くんか、会うのは初めてだね、話はもう聞いているよ。」 予想に反して柔らかい声が響いた。 「ようこそ、キアロスクーロへ。」 「俺がキアロスクーロのボスだ、よろしく。今回の和くんの件、協力してくれるそうだね、ありがとう。」 「いえ、和は親友なので、黙って見てるわけにはいきませんから。」 ぐっと拳を握る。 和…。 「大丈夫だ、きっと見つかる。約束しよう。なに、1人で抱え込まなくていい、たくさんの仲間がいる、これからは…。」 「ちょっと待って下さい!ボス、」 「なんだ、成。」 成、と呼ばれたその人は、驚き、そして慌ててボスの肩を掴んだ。 「まさか、この子をキアロスクーロの一員にするおつもりですか…?」 「そうだが?」 「そうだじゃありません!一員になるという事は、直接的な仕事をしなくても、いずれ危険な目に遭うことになります。ボスだって分かっているでしょう?まだこんなに若い子を危険にさらすなんて、考え直して下さい…。」 「相変わらず、心配性だなぁ、成は。そもそも、成だって、14でこの組織で働いてたじゃないか。」 「それは…っ、」 成さんは、かわいらしい顔に似合わず、キッと睨みつけるようにボスを見た。なんだか、見ているだけでハラハラするが、それを楽しむ様に見ている陸斗さんの様子だと、いつもの事なのだろうか。 「とにかく、開生くんは、和くんを助けたいと思っている。もしこの組織に入らなくても動くつもりだろう?」 「ええ、そのつもりです。」 心を読まれたようで、ドクンと心臓がなった。 「それならば、組織に入った方が、開生くんの安全は保証される。組織の一員として、守ることができるからね。」 成さんはボスの肩から手を離した。それを見て、ボスは微笑んだのだった。

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