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新場 3 開生side
「と、言う訳で君は今日からキアロスクーロの一員だ。キアロスクーロは陰影の組織、正義でもあり、悪でもある組織だと俺たちは思っている。自分達の善を為すためには悪を働く。つまりは人殺しだってする。成の言っている通り、君が直接手を下さなくとも、君にもリスクは降ってくる。それは覚悟しておいて欲しい。」
ボスの言葉はずっしりと心に刺さった。これから俺は、今までのような平凡な日常には戻れなくなる。けれど、それは俺が望んでいた事。生き甲斐を見つけたような気がした。
「まぁ、リスクと言っても怯えながら生活する事もない。俺たちには頼もしい仲間がいるからな。紹介がまだだった。俺の隣にいるのが、成だ。この組織の総務を担当している。内部の事は成が1番知っているから、分からないことがあれば何でも聞くといい。」
「恐縮です、是非、お役に立てれば幸いです。」
成さんは穏やかに微笑んだ。
「それから、陸の事はよく知っているだろうけど、彼は、局務を担当している。詳しくは、各人員への細かい指示や情報収集、とかだな。」
「こっちの世界では、情報屋って呼ばれてるよ。」
情報屋、だから陸斗さんは色んなところふらふらしていたのか。なんだか掴み所のない、胡散臭い人だと思っていたけど、ちゃんと仕事してるんだな、なんて妙に感心した。
「菅井さんは…?」
「浩は医務担当だよ、和くんの体調管理とかしてたでしょ?ああ見えて意外と腕いいんだよなぁ。」
何がおかしいのかケラケラ笑う陸斗さんは思い出したように、あ、と声をあげた。
「浩でいいよ、俺たちはみんな下の名前で呼び合ってるから。」
家族みたいなものだと思えばいい。陸斗さんに続いて、ボスはそう言った。
「あと、他にもいるんだが、特に開生に紹介したい2人がいる。それは明日にでも紹介しよう。」
「ああ、ボス、彼らなら仕事が予定よりも早く片付いたと連絡があったので、もうそろそろ帰ってくる頃かと…。」
バンッ!!
「失礼します!ただいま戻りました!」
成さんが言い終わるよりも前に、後ろの扉が勢いよく開き、威勢の良い声が聞こえてきた。
「涼平さん、声でか…。」
2人のうち、成さんよりも少し背の高い黒髪の青年は片耳を押さえながらボスの前まできて、膝をつき手を合わせる。
「ただいま戻りました、ボス。」
「今回も随分早かったな。」
「準備体操にもならない相手ばっかりで、ねぇ、涼平さん?」
青年は、まだ扉付近にいるガタイのいい男に、そう言った。
「ははっ、ホント参ったよ?、実が1発で仕留めるもんだから、今回も俺の出番なかったんだぜ?」
笑いながらゆっくり歩いてきたその男は、俺の前で止まる。
「んー?見ない顔だな。」
撫でまわすように、俺を見た。
なんか、怖い…。
「ちょうど良かった、紹介しよう。今日からキアロスクーロに入る事になった開生だ。この子に護身術を教えてやってほしい。」
「ああ、この間言ってたやつか、おう、任せとけ、開生よろしくな?」
「わっ、」
頭をガシガシと撫でられる。
すごい力…。
「開生の目の前にいるのが、涼平 だ。で、こっちにいるのが、実 。2人は防務を担当していて、この組織に欠かせない重要な戦闘力だ。」
「ようこそキアロスクーロへ、これからよろしく、開生。」
実さんはそういい、手を差し伸べてきた。俺も手を差し出す。
「開生です、よろしくお願いします。」
「実はこの組織の中で1番若くて20歳だ、歳も開生と近いし、色々聞くといい。早速だが、この建物の中を案内してやってくれ。」
そして俺は、実さんと涼平さんに連れられ、部屋を後にした。
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