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エピローグ

「あーあ、かったりぃな。」 裏の組織が年に何度か集まる会合。厳かな会議の合間に頼斗はタバコを取り出し、そして息を吐いた。 「そういえば、あれ、ほんとに良かったんスか?」 「何がだよ?」 「内田翔吾と佐伯和を使うって言ってたじゃないっすか、いいんですか?」 「あー、いいよ。もう興味ねぇし。」 そう言って、また煙を吐き出す姿を見て、ケンは苦笑いする。 「…いいんスか?ほっといて。内田翔吾、キアロに入ったって噂が…。」 「はぁ?チッ、面倒くせぇ…。まあいい、あっちにはまだ火種がばら撒かれてっからな、なぁ、成…?」 2人の様子を影から隠れて見ていた成は突然頼斗に名前を呼ばれ、びくりとするが堪忍して姿を2人の前に現した。 「スパイでもしろって言われてんのか?自分を育ててくれた組織を裏切る気分はどうだ?楽しいか?」 「ちょっ、頼人さん…。」 「いえ…たまたま通りかかっただけです。すみませんでした。では、失礼します。」 その場を立ち去ろうとする成の後ろ姿を見る頼斗とケン。あの頃とは違う凛とした姿に、ケンは少し寂しそうな目を向けた。一方の頼斗はにやりと口角を上げ、成を呼び止める。 「待て、セイ。」 その声に、成は形相を変えて振り向く。 「そう睨むなよ。俺んとこのボスからの伝言だ。」 嫌な予感がして、眉を顰める成。すると、頼斗は楽しそうに笑って、 ───戻ってこい、セイ。また愛してやる。─── ぞわり。 頼斗が言ったのに、あの人の声に変換されて、それが頭に響いた。体が震える。 しかし、直ぐに逞しい腕に包まれた。 「誰が戻るって?成、先に控え室に戻りなさい。」 「ハル様っ…、でも、あなたに何かあったら…!」 「いいから、涼平がいるはずだ。早く戻れ。これは命令だ。」 そう言って、ボスは成の背中を押す。すると、成はボスに一礼をして、足ばやに去っていった。 「おーおー、これは、キアロのボスさん、いつもバカ弟がお世話になってますねぇ。」 ふざけた頼斗の口調にボスはキツく睨みつける。 「内田にクスリを流したのはお前だな…?」 「さぁ、何の事でしょうねえ…?」 「とぼけるな、お前は、佐伯和くんとキアロの官員が関わっているのを知って、そうしたんだろ?先程の成の件といい…。レデルとは不可侵条約を定めたはずだ。お前達が俺たちキアロに手を出してくるのなら、それは信用問題にも関わる。お前たちのこの世界での地位は危なくなるぞ。そうお前んとこのボスに言っとけ。今回だけは見逃してやる。」 そして互いに睨み合った後、頼斗はだるそうに、「分かりましたよ。」とため息をついた。建物の中に戻っていくボスの後ろ姿を眺めながら、また頼斗の口角は上がっていたのだった。 完。

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