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1-50 好きなコ
彼の頬に触れて軽く抓る。
「こんな崖っぷちのおっさんにそういうこと言うんが
どういう事か分かってるんか?」
そんな風に笑顔を振りまいて、怖いとは思わないのか。
それとも無知という名の残酷を極めているのか。
ミナミは困ったように首を傾けた。
「んー…わかんないです。オレ馬鹿なんで。
ずっと一緒にいようってことですか?」
ミナミはそう言ってまた崖っぷちのおじさんにとっては残酷な笑みを浮かべるので
袖野は海よりも闇よりも深いため息を零して、彼に口付けた。
「…っん…ッ」
床に倒して深く深く口付けて。
唇を離すとぼけっとこちらを見上げてくる彼を見つめた。
「どうなっても知らないよ?」
もしかしたら彼は、深く考えずに言っているだけかもしれなかったが。
それでもその全能感に満ちて、悟りを開いたような瞳には、
争うこともできずに溺れていくのだ。
「……えっへへ、両想いだぁ」
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