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『もしも』(シロ×黒滝)
『もしも』
『もしも』で浮かんだことなんて、ただの自己満足でしかない。
それでもその『もしも』を口に出してしまうのは、相手のことをもっと知りたいと思ってるからなんだろうな。
「『もしも』世界が明日で終わるってなったらどうする?」
心地よい風が吹く屋上、俺とシロはフェンスに寄りかかりながらコンクリートの床に座り込んでいた。
俺は青空を、シロは情報屋の仕事中なのか携帯に視線を向けている。
そしてそんな俺の言葉に反応したらしいシロの顔が、携帯から俺へと移される。
それでも俺は青空に顔を向けたまま。
「シロは、どうする?」
「……黒滝はどうするんだ?」
まさか逆に聞き返されるとは思っていなかった。
といっても答えは決まってるから悩むことはないんだけれど。
「もし許されるなら、俺はシロのそばにいたい。シロのそばで笑って、悲しんで、泣いて。最後の一日をずっと一緒にいたいって思うな」
それ以外に考えられない、とシロに顔を向けたその瞬間。
彼の手のひらが俺の後頭部に触れ、そのまま引き寄せられた。
流れに従うように彼の胸に顔を埋めてしまったため、どんな表情を浮かべていたのかわからない。
というか、お面を被ってるから表情はわからないか。
「……シロ?」
「俺も、黒滝のそばにいたい。例え世界が終わらなくても、俺のそばにずっといてくれるか?」
頭を優しく撫で、囁かれた言葉に俺の胸はじんわりと熱くなる。
「もちろん。世界が終わっても終わらなくても、俺はずっとシロのそばにいる」
「……嬉しいこと言ってくれる」
頭を押さえていないほうの、携帯を手にしていたはずの手がいつの間にか俺の腰にまわされていた。
ギュッ、と力を込め抱き締めるシロの手が心地いい。
『もしも』この心地いい手が。
シロが俺から離れるようなことがあったら、俺はどうするんだろう。
俺は、どうなるんだろう。
「……シロ」
『もしも』で浮かんだことなんて、ただの自己満足でしかない。
それなのにこんなにも不安を感じるのは、相手のことを好いているからなんだろうな。
(終)
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