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『……好きだ。聖……』 「――っ」  行き場のない罪悪感が、聖の心を支配する。  起こした身体から力が抜け、椅子の背もたれに寄り掛かり、右手で瞼を覆う。 「……なんつー夢見てんだよ俺……」  朝方見たのは、切なく掠れた声で何度も名前を呼ばれ、耳元で好きだと囁かれる夢。  いくら彼女にフラれたからと、親友に告白される夢を見るほど自分は愛に飢えていたのだろうか。  威張って言えることではないが、聖は女の子が大好きだ。  柔らかくてあたたかくていい匂いのする身体。りん、と鈴が鳴るような軽やかで甘い声音。  真壁は女の子のそれらは何ひとつ、持っていない。  なのに、甘く囁かれる夢を見ただけでいい気分になってしまっただなんて。  悪くないと、その心地良さに思わず寄り添ってしまいたくなっただなんて。   それほどまでに、自分は病んでいたのだろうか。  ぶたれた頬はもう痛みも未練も残してやいないというのに。  こんな事、誰にも言えない。心の奥底から居た堪れない。 「……彼女いらねぇとか言ってる場合じゃなくね? 俺ヤバくね?」  夢がきっかけで、現実の真壁の顔が見れない程に意識してしまうだなんて。  男なんて勘弁だ。  女の子と同じようにアンな事やこんな事をするだなんて……。  ――え、体格的に女役は俺? (しなくてもいいのに)そこまで想像し、ギシリ、と聖の身体が固まった。 「おおぉぉぉぉすっっげぇ鳥肌……」  真壁に抱きしめられる自身を想像しただけで聖の身体中を寒気が駆け抜けていった。  友人の一人として真壁は好きだが、恋愛対象として接するだなんて冗談じゃない。  これはヤバい。いい傾向でないのは確実だ。 「……マジでありえねぇ俺…」  頭をぶんぶん振っても決して消えてくれない夢の余韻に絶望しつつ、聖は自身の身体を抱いてぶるりと震えた。

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