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真壁の揺れる視界には、縛られた両手を強く握り込んだまま俯き、声なき声で嗚咽をあげる聖が映っていた。
どれだけの力で握り合わせているのか――その両手の甲には爪の痕が濃く残り、血が滲んでいる。ベルトが食い込んだ手首は擦れ、真っ赤に腫れてしまっている。
ドクリ、ドクリと心臓が痛みを訴えかけてくる。
そっと聖の身体を離し、震える肢体にタオルをかけてやって真壁はただうなだれた。
熱くて熱くて、どうしようも無かった身体がすうっと冷え切っていく。
何度も何度もやめてくれと、そう叫んではいなかったか。なのに、己の欲望に負け、何よりも大切で、誰よりも好きなひとを傷付けてしまった。
それだけは嫌だと、ずっと耐えていたのに――どうしてこんなことになってしまったのだろう。
「……ごめん。ごめん、聖……ごめ、……っ」
震えるばかりで何も答えない聖の背を見て、真壁の瞳から一筋の涙が滑り落ちた。
堪えきれなかったそれは次々と溢れ、後悔の念に苛まれる真壁の頬を濡らしていく。
「好きで、ごめん。ごめん、……好きだ」
好きと、ごめん。
その言葉だけを何度も繰り返し伝え、真壁は肩を震わせる。
じわじわと煩い蝉の声だけが、ふたりの間に転がった。
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