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目を覚ますと、いつもと変わりのない世界が聖の視界に広がっていた。
ブルーのベッドシーツ、ふたり分の食器を置くのがやっとの小さなテーブル、そして静かな風を送ってくる古びた扇風機。
眩しい朝陽の光がカーテンの隙間から差し込み、扇風機の風などではどうしようもないくらいに室内は暑くなっていた。
じっとりと滲む汗も、覚めきれない目に映る何もかもが、いつも通りだった。
「……。いってぇ……」
のそりと身を起こし、聖は鈍い痛みを訴えかける頭を抱えた。
身に覚えがある。これは、二日酔いだ――と、昨夜の自分を呪いながら。
「なあ、ポカリねぇ? まか、……」
真壁――いつも通りにその名を呼ぼうとして、はっとした。
痛みを訴えかけているのは、頭だけではない。爪の痕が残る手の甲と手首と……尻。それも、自分でも触れたことのない、最奥が、じんじんと痛む。
途端に、津波のように昨夜の記憶がものすごい勢いで舞い戻ってくる。
何度も何度も、やめてくれと叫んでも聞き入れてはくれなかった。身体を這っていく、熱い指先と舌。抗っても襲いくる、強い快楽
見たことのない、欲望に塗れぎらついた瞳。
「まか、べ……?」
『ごめん、好きで……好きで、ごめん』
どれだけ抵抗しても無理やりに聖の身体を組み敷き、恐怖すら与えた男は、最後に声を震わせてそう言っていた。
震える声音と、けたたましく煩い蝉の声。それを最後に、以降の記憶が聖から抜け落ちていた。
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